ゾヌリン系11

http://physrev.physiology.org/content/91/1/151.long#sec-9

III-F. Stimuli That Cause Zonulin Release in the Gut
ゾヌリンが腸に放出される原因となる刺激




Among the several potential intestinal luminal stimuli that can trigger zonulin release, we identified small intestinal exposure to bacteria and gluten as the two more powerful triggers (Fig. 7).
いくつかの腸管腔への刺激が、ゾヌリン放出の引き金となる可能性がある。
我々はその中で、小腸の細菌とグルテンへの曝露を二つのより強力な誘因として同定した(Fig.7参照)。

Enteric infections have been implicated in the pathogenesis of several pathological conditions, including allergic, autoimmune, and inflammatory diseases, by causing impairment of the intestinal barrier.
腸の感染は、アレルギー、自己免疫疾患、炎症性の疾患など、いくつかの病的状態の病因に関係する。
これは腸バリア機能の機能障害を引き起こすことによる。

We have generated evidence that small intestines exposed to enteric bacteria secreted zonulin (53).
腸内細菌にさらされた小腸はゾヌリンを放出するという証拠を我々は発見した。

This secretion was independent of either the animal species from which the small intestines were isolated or the virulence of the microorganisms tested, occurred only on the luminal aspect of the bacteria-exposed small intestinal mucosa,

この分泌は、小腸がどのような動物種から分離されたか、試験した微生物に毒性があったか、そのどちらにも依存せず、細菌に曝露した小腸粘膜の管腔の面でのみ起きた。

and was followed by an increase in intestinal permeability coincident with the disengagement of the protein ZO-1 from the tight junctional complex (53).
そして腸透過性の上昇が続き、タイトジャンクション複合体からのタンパク質ZO-1の遊離が同時に起きた。

※ZO-1: タイトジャンクション(閉鎖帯)はラテン語でZonula Occludensというが、その複合体を構成する細胞質側タンパク質の一つがZO-1。ショウジョウバエの癌抑制遺伝子dlgと高い相同性がある。細胞膜内タンパク質としてはClaudin(クローディン)、Occludin(オクルディン)がある

This zonulin-driven opening of the paracellular pathway may represent a defensive mechanism which flushes out microorganisms so contributing to the innate immune response of the host against bacterial colonization of the small intestine.
このゾヌリンにより強制的に開放される細胞間経路は、微生物を追い出す防御メカニズムの代わりなのかもしれない。
それは小腸にコロニーを形成する細菌に対する、宿主の自然免疫応答に寄与するのである。

※represent: 象徴する、表す、代表する、~の代わりを務める

In addition to bacterial exposure, we have shown that gliadin also affects the intestinal barrier function by releasing zonulin (35).
細菌への曝露に加えて、グリアジンもゾヌリンを放出させることで腸のバリア機能に影響する。

※gliadin: グリアジン。小麦のグルテンに含まれる成分の一つで、小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)の原因となることが多い

This effect of gliadin is polarized, i.e., gliadin increases intestinal permeability only when administered on the luminal side of the intestinal tissue (35) (Fig. 7).
このグリアジンの影響は極めて偏っている。
すなわち、グリアジンが腸の透過性を上昇させるのは、腸組織の管腔側に投与された時だけである(Fig.7参照)。

※polarize: 分極化(分裂、偏向、対立)させる

This observation led us to the identification of the chemokine receptor CXCR3 as the target intestinal receptor for gliadin (92).
このような観察から、我々はグリアジンがターゲットとする腸内の受容体として、ケモカイン受容体のCXCR3を同定した。

※chemokine: ケモカイン。白血球を呼び寄せる走化性をもつサイトカイン。N末端付近のシステイン(C)残基により、CXC、CC、XC、CX3Cサブファミリーに分類される

※CXCR3: ケモカイン受容体の一つ。選択的スプライシングによりCXCR3AとCXCR3Bの二つの異型が存在する。CXCR3Aは主にT細胞、NK細胞、B細胞に発現し、生体内リガンドはCXCL9、10、11。繊維芽細胞や内皮細胞にはCXCR3Bが発現、リガンドはCXCL4、9、10、11

Our data demonstrate that in the intestinal epithelium, CXCR3 is expressed at the luminal level, is overexpressed in CD patients (Fig. 8), and colocalizes with gliadin and that this interaction coincides with recruitment of the adapter protein MyD88 to the receptor (92).
腸の粘膜上皮には管腔側にCXCR3が発現しているが、セリアック病患者ではそれが過剰発現しており(Fig.8参照)、しかもグリアジンへの曝露に応じて発現が上昇する。
この相互作用は、足場タンパクMyD88がCXCR3レセプターへ呼び寄せられるのと同時に起きることが明らかになった。

※level: 水平、高さ、(価値や地位の)水準、(強さや量の)程度、(物質の体液中での)濃度

※colocalize: 共局在化。グリアジン濃度に応じて発現が変化するということか

※MyD88(Myeloid differentiation factor): ミエロイド(骨髄)系分化因子88。TIRドメインとデスドメインをもち、それぞれTLR、IRAKなどと結合するアダプター分子

We also demonstrated that binding of gliadin to CXCR3 is crucial for the release of zonulin and subsequent increase of intestinal permeability, since CXCR3-deficient mice failed to respond to gliadin challenge in terms of zonulin release and TJ disassembly (92).
CXCR3へのグリアジンの結合は、ゾヌリンの放出と腸の透過性増進にとって最も重要であることが判明した。
なぜならCXCR3欠損マウスは、グリアジンの投与に対して、ゾヌリンの放出とタイトジャンクションの形成不全の点で応答に失敗したからである。

Using a α-gliadin synthetic peptide library, we identified two α-gliadin 20-mers (QVLQQSTYQLLQELCCQHLW and QQQQQQQQQQQQILQQILQQ) that bind to CXCR3 and release zonulin (92).
我々はα-グリアジン合成ペプチドライブラリーを使い、そこに含まれる二つの20連ペプチド分子を同定した。
QVLQQSTYQLLQELCCQHLWと、QQQQQQQQQQQQILQQILQQは、CXCR3に結合し、ゾヌリンを放出させる。

※mer: 分子。monomer(単量体),dimer(二量体),polymer(重合体)と同じように、20-merは「20量体」、もしくは「20分子」

※Q(グルタミン)、V(バリン)、L(ロイシン)、S(セリン)、T(トレオニン)、Y(チロシン)、E(グルタミン酸)、C(システイン)、H(ヒスチジン)、W(トリプトファン)、I(イソロイシン)






Fig. 7.

Stimuli causing polarized zonulin release from intestinal epithelial cells.
腸粘膜上皮からのゾヌリンの放出を引き起こす刺激

A-C: anti-zonulin immunoflourescence staining of human intestinal Caco2 cells.
A-C: ヒト腸Caco-2細胞を、抗ゾヌリン免疫蛍光抗体法で染色したもの

Cells exposed to gliadin/PT-gliadin (B) react by packaging preformed zonulin in vesicles (arrows) that gradually approached the cell membrane and then released their zonulin content in the cell medium within a few minutes of the exposure to gliadin.
グリアジンまたはペプシン-トリプシンで消化したグリアジンに曝された細胞は、前もって作られていたゾヌリンを小胞にパッケージする。
この小胞はだんだん細胞膜に近づき、そして曝露して数分以内に内容物であるゾヌリンを細胞間へ放出する。


※PT-(Peptic-Tryptic digests of): ペプシン-トリプシン消化物

No packaging was detected in nonstimulated cells (control, A) or cells incubated with PT-casein (C).
刺激していない細胞からはそのような応答は検出されない(対照、A)。
また、ペプシン-トリプシンで処理したカゼインと一緒に培養した細胞でも同様である(C)。

The nucleus is in blue (DAPI), cytoskeleton in red (RITC), and zonulin in green (FITC). Magnification ×100.

核は青(DAPI)、細胞骨格は赤(RITC)、ゾヌリンは緑(FITC)である。倍率は×100。


※DAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole): ジアミジノフェニルインドール、またはダピ。細胞膜を透過してDNAのATに富む領域に結合し、紫外線で発光する蛍光色素

※RITC(rhodamine B isothiocyanate): ローダミンイソチオシアネート。赤色色素

※FITC(fluorescein isothiocyanate): フルオレセインイソチオシアネート。緑色色素


D: polarized zonulin secretion of intestinal cells exposed to either bacteria or PT-gliadin.
細菌もしくはペプシン-トリプシン消化グリアジンに曝露した腸粘膜細胞はゾヌリン分泌に偏向する

Both rat (IEC6) and human (Caco2 and T84) intestinal epithelial cells exposed to either nonpathogenic bacteria or gliadin secrete large amounts of zonulin in the bath medium compared with the amount of zonulin measured in media of cells exposed to control.
非病原性の細菌またはグリアジンに曝されたラット(IEC6)とヒト(Caco-2とT84)両方の腸上皮細胞は、対照と比較して培養液中に大量のゾヌリンを分泌する。


※IEC6(ラット小腸上皮細胞株)、 Caco-2,T84(ヒト結腸癌細胞株)

※bath: 溶液(原義は「暖かい所」)

※medium: 培養基

This secretion was detected only when the triggers were added to the luminal (apical) aspect of the cell monolayers.
細胞単層の管腔(頂点)側に原因物質が加えられた時のみ、このような分泌は検出される。


※CD36: 膜貫通型タンパク質。スカベンジャレセプターとして長鎖脂肪酸、酸化LDL、コラーゲン、アポトーシス細胞または特定の細菌や真菌などと結合し、またTLRの補助タンパク質としても働くことで免疫系にも寄与している。アクチン細胞骨格により重合化が制御される。
http://www.cosmobio.co.jp/aaas_signal/archive/re_20090526.asp
http://first.lifesciencedb.jp/archives/3632

※arbitrary: 任意の、随意の、専制的な。arbitrary unitで「任意単位」。公式に定義された単位ではなく、研究室レベルの単位であることを表す






Fig. 8.

Top: in situ immunofluorescence microscopy of CXCR3 in human small intestinal biopsies obtained from either celiac patients or nonceliac controls.
上: セリアック病患者もしくは健常者から得られたヒト小腸生検において、生体内でのCXCR3の発現を示した免疫蛍光法による顕微鏡画像


※biopsie: 生検(生体組織診断)

CXCR3 staining in red (RITC) is homogeneously visible on the apical side of intestinal epithelial cells of biopsies from celiac disease patients, while the CXCR3 staining is patchy in nonceliac controls.
赤で染色(RITC)されたCXCR3は、セリアック病患者の生検から得られた腸上皮細胞の頂点側には均一に見ることができる。
一方、非セリアック病の対照では染色されたCXCR3はとぎれとぎれである。

Bottom: quantitative real-time PCR of the CXCR3 gene confirmed an increased expression of the receptor compared with nonceliac controls that decreased after treatment with a gluten-free diet.
下: CXCR3遺伝子の定量的リアルタイムPCRを行った。
グルテン除去食による治療後の緩解群ではレセプターの発現が減少していたが、それと比較してセリアック病患者ではレセプターの発現が増加していた。


※PCR(polymerase chain reaction): ポリメラーゼ連鎖反応。DNAを繰り返し熱変性と冷却を繰り返しながら、プライマーと呼ばれるオリゴヌクレオチドとポリメラーゼによって増幅する方法

※quantitative real-time PCR: 定量的リアルタイムPCR。経時的にPCR産物を計測することで総量を間接的に測定する方法

Note the increased infiltrate of CXCR3-expressing immune cells in celiac disease biopsies compared with nonceliac controls.
特に注目すべきは、非セリアック病対照群と比較して、セリアック病患者の生検からは、CXCR3を発現する免疫担当細胞の浸潤が増加していたことだ。

The nucleus is in blue (DAPI) and the cytoskeleton in green (FITC). Magnification ×60.
核は青(DAPI)、細胞骨格は緑(FITC)で染色してある。倍率は×60。

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by travelair4000ext | 2012-11-04 11:10 | 翻訳  

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