グルテン関連疾患05

http://www.biomedcentral.com/1741-7015/10/13#sec2

Baker's asthma
パン屋の喘息




Recognized since the time of the Roman Empire, baker's asthma and rhinitis are well-characterized allergic responses to the inhalation of wheat and cereal flours and dusts [13].
ローマ帝国時代から知られていたパン屋の喘息と鼻炎は、多くの人によって記述されてきたアレルギー反応であり、小麦と穀物の粉塵を吸い込むことに反応して起きる。

A Polish study discovered that chest respiratory symptoms ascribed to baker's asthma were observed in 4.2% of bakery apprentices after only one year and in 8.6% after two years [14].
ポーランドでの研究によれば、パン屋の喘息が原因の肺呼吸器症状は、パン屋の見習いになってわずか1年後で4.2%、2年後には8.6%に見られることが判明した。

The corresponding values for allergic rhinitis were 8.4% and 12.5%, respectively.
対するアレルギー性鼻炎の値は、それぞれ8.4%と12.5%であった。

Diagnosis is usually based on skin prick tests and the demonstration of specific IgE antibodies (for example, anti-wheat, -barley and -rye flour IgE as well as anti-α-amylase IgE in serum).
診断は一般にプリックテストと、特異的なIgE抗体があるかどうかによる。
(特異的とは例えば、血清中の抗コムギ、抗オオムギ、抗ライムギ粉のIgE抗体、加えて抗α(アルファ)-アミラーゼIgE抗体である)

※skin prick test: プリックテスト。I型(即時型)アレルギーのアレルゲンを特定するための検査。皮膚にアレルゲンを含む液体を垂らし、そこへ針を軽く刺してから15分後の反応を見る。対照としてヒスタミンを使い、それと比較して半分~ほぼ同じ反応ならば陽性とする

Little was known about the proteins responsible for baker's asthma until the application of electrophoresis combined with immunochemistry in the 1970s.
1970年代に免疫化学と組み合わせた電気泳動法が利用されるようになるまで、パン屋の喘息の原因となるタンパク質はほとんど知られていなかった

※immunochemistry: 免疫化学。抗原と抗体の構造や、補体との相互作用について研究する学問分野。1960年代から勃興した免疫生物学に対する用語

Such early studies showed that multiple allergens were present, with the water-soluble albumins being particularly reactive with the IgE fractions from patients' sera [13].
そのような早期の研究によれば、患者の血清からのIgE分画と特に反応する水溶性のアルブミンなど、複数の抗原が存在することが示された。

※albumin: 動植物の細胞や体液に含まれる可溶性タンパク質の総称。不溶性の物質を運搬したり膠質浸透圧を維持する機能がある

More recent studies have identified individual proteins, which are recognized by IgE from patients' sera.
より最近の研究により、患者の血清中IgE抗体と反応する個々のタンパク質が決定された。

It is clear that one group of wheat proteins contains the most important allergens, the α-amylase inhibitors.
小麦タンパク質に含まれる最も重要な抗原がα-アミラーゼインヒビターであることは明らかである。

※α-amylase inhibitor: デンプンからオリゴ糖を加水分解により切り出す酵素。inhibitor「阻害するもの」

However, a number of other proteins present in wheat, including germ agglutinin, peroxidase and non-specific lipid transfer proteins (LTPs), have been reported to bind to IgE from patients with baker's asthma [13].
しかし、小麦に存在する他のかなりの数のタンパク質、例えばコムギ胚芽凝集素やペルオキシダーゼ、脂質輸送タンパク質などが、パン屋喘息患者からのIgE抗体と結合することが報告されている。

※wheat germ agglutinin: コムギ胚芽凝集素。分子量3万6000。N-アセチルグルコサミンなどに結合するレクチン。レクチン(lectin)は糖タンパク質に結合するタンパク質の総称で、抗体の糖鎖と反応する可能性がある

※peroxidase: ペルオキシダーゼ。過酸化水素(H2O2)を分解して水に還元する酵素でヘムを含む。peroxy-「過酸化物」

※lipid transfer protein (LTP): 脂質輸送タンパク質。分子量9000。アミノ酸残基は90程度だが、そのうち8個がシステインでありペプシン抵抗性である。別名PR-14。抗菌機能があるとされる

It is of interest that both peroxidase and LTP have also been reported to be active in food allergy to wheat [13].
ペルオキシダーゼと脂質輸送タンパク質、そのどちらも、小麦アレルギーの食物アレルギーにおいても抗原として作用すると報告されている。


Food allergy
食物アレルギー

Allergic responses to the ingestion of wheat can be divided into two types.
小麦の摂取に対するアレルギー反応は、二つのタイプに分けることができる。

WDEIA is a well-defined syndrome that is caused by a specific type of grain protein, ω5-gliadins.
小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)は明確に定義された症候群であり、ω(オメガ)5-グリアジンという穀物タンパク質の特定の型によって引き起こされる。

Other allergic responses include atopic dermatitis, urticaria and anaphylaxis and appear to be related to a range of wheat proteins.
他のアレルギー反応にはアトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシーがあり、小麦の様々なタンパク質に関連しているようである。

These may vary between populations and be related to age and symptoms.
これらのことは人種ごとに異なるかもしれず、また年齢や症状にも関連しているだろう。

Studies with purified proteins using IgE specific assays with patients' sera showed that 60% had IgE to α-gliadins, β-gliadins and low molecular weight subunits, 55% to γ-gliadins, 48% to ω-gliadins, and 26% to high molecular weight subunits [13].

患者の血清から得られた特異的IgE検査を使って精製したタンパク質を使った研究により、患者の60%がα-グリアジンとβ(ベータ)-グリアジン、低分子(グルテニン)サブユニットに対するIgE抗体を持っていた。
また、55%がγ(ガンマ)-グリアジンに、48%がω-グリアジンに、26%が高分子(グルテニン)サブユニットに対する抗体を持つことが示された。

All patients with anaphylaxis or WDEIA and 55% of those with urticaria had IgE to ω5-gliadins [13].
アナフィラキシーかWDEIAを起こす患者の全て、それと小麦摂取による蕁麻疹の患者の55%が、ω5-グリアジンに対する抗体を持っていた。


Wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis
小麦依存運動誘発性アナフィラキシー

Patients with WDEIA display a range of clinical symptoms, from generalized urticaria to severe allergic reactions including anaphylaxis.
WDEIAの患者は、全身性の蕁麻疹からアナフィラキシーを含む深刻なアレルギー反応まで様々な臨床症状を示す。

Using synthetic peptides, scientists have identified seven epitopes (QQIPQQQ, QQLPQQQ, QQFPQQQ, QQSPEQQ, QQSPQQQ, QQYPQQQ and PYPP) within the primary sequence of ω5-gliadins as the major allergens.
研究者たちは合成ペプチドを使い、ω5-グリアジンの一次構造の内にある7つのエピトープを同定した。
(QQIPQQQ, QQLPQQQ, QQFPQQQ, QQSPEQQ, QQSPQQQ, QQYPQQQ, PYPP)

※Q(グルタミン)、I(イソロイシン)、P(プロリン)、L(ロイシン)、F(フェニルアラニン)、S(セリン)、E(グルタミン酸)、Y(チロシン)

※primary sequence: 一次構造。英語ではprimary structureと書くことが多い

Four of these epitopes were found to be dominant: QQIPQQQ, QQFPQQQ, QQSPEQQ and QQSPQQQ.
これらのエピトープのうち、4つが重要であることが分かっている。
(QQIPQQQ, QQFPQQQ, QQSPEQQ, QQSPQQQ)

Mutational analysis of the QQIPQQQ and QQFPQQQ peptides indicated that the amino acids at positions glutamine-1, proline-4, glutamine-5, glutamine-6 and glutamine-7 were critical for IgE binding [13].
ペプチドのQQIPQQQとQQFPQQQの変異解析では、アミノ酸の位置で1番目のグルタミン、4番目のプロリン、5番目のグルタミン、6番目のグルタミン、7番目のグルタミンがIgEとの結合に重要であることが示された。

※mutational analysis: 遺伝子の変異によりアミノ酸が置換されたタンパク質を正常なタンパク質と比較し、機能の違いなどを検出する研究法


Diagnosis
診断

Skin prick tests and in vitro IgE assays are first-level diagnostics for WA.
肌へのプリックテストと生体外でのIgE検査が、小麦アレルギー(WA)診断の第一段階である。

However, the positive predictive value of these tests is less than 75%, particularly in adults due to the cross-reactivity with grass pollens.
しかし、これらのテストで予測される陽性の値は75%未満であり、特に大人では花粉との交差反応性のために偽陽性になりやすい。

※cross reaction: 交差反応。ある抗原に対する抗体が、別の抗原に対して反応して結合すること

In addition, many commercial reagents for skin prick tests have a low sensitivity since they are mixtures of water- and salt-soluble wheat proteins that lack allergens from the insoluble gliadin fraction.
加えて、プリックテスト用に市販される試薬の多くは感度が低い。
なぜなら、それらは水溶性と塩溶性の小麦タンパク質の混合物であり、不溶性であるグリアジン分画からの抗原を欠いているからである。

Testing prick by prick using only raw material partially overcomes this problem, and in many cases an oral food challenge is necessary for the final diagnosis of food allergy.
生の食材だけをプリックすることによるプリックテストではこのような問題は起きない。
そして多くの場合、食物アレルギーの最終診断には経口負荷試験が必要である。

※prick by prick: 食材に針を刺し(prick)、すぐに肌に刺す(prick)という方法での検査

In recent years a large variety of wheat grain proteins have been identified and characterized as allergens.
近年になり、様々な小麦穀物タンパク質がアレルゲンとして判明し、特徴が調べられてきている。

Some of them are now available for component resolved diagnosis in WA with an increase of diagnostic accuracy of the in vitro IgE assays.
生体外でのIgE検査の診断に、より正確さが求められるようになってきた現在、それらのうちいくつかが小麦アレルギーの診断を確定する際に成分として利用可能である。

There is no evidence that identifying serum-IgG antibodies to wheat or gliadin indicates the presence of disease.
小麦もしくはグリアジンに対する血清IgG抗体を確認しても、疾患の存在を示すという証拠にはならない。
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by travelair4000ext | 2012-12-12 16:43 | 翻訳  

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