グルテン関連疾患08

http://www.biomedcentral.com/1741-7015/10/13#sec2

Gluten ataxia
グルテン運動失調




Gluten ataxia (GA) was originally defined as otherwise idiopathic sporadic ataxia with positive serological markers for gluten sensitization [31].
グルテン運動失調(GA)は元々は別の病気として定義された。
つまり、血清マーカーでグルテン感作が陽性の、特発性で散発性の運動失調症としてである。

※otherwise: 別の、他の。他の方法で

※idiopathic: 特発性の。原因不明の疾患

※sporadic: 散発性の。まれにしか起こらず、規則性がない発症の仕方についていう

※sensitization: 感じやすくすること。感作。体内に侵入した抗原に対して免疫が応答して、次の抗原の侵入に対応する準備ができている状態

Like CD, it is an autoimmune disease characterized by damage to the cerebellum resulting in ataxia.
グルテン運動失調はセリアック病と同じように自己免疫疾患であり、小脳の障害の結果として運動失調に至るという特徴がある。


Epidemiology
疫学

A series of 800 patients with progressive ataxia evaluated over a period of 15 years in Sheffield, UK, found that 148 out of 635 patients (23%) with sporadic ataxia had serological evidence of gluten sensitization (M. Hadjivassiliou, personal communication).
イギリスのシェフィールドで15年に渡って進行性の運動失調の患者800例を調査した結果、散発性運動失調患者の635人中148人(23%)の血清中にグルテンに感作した証拠が見つかった(M.ハジバシリウ、未発表データ)。

A number of studies looking at the prevalence of anti-gliadin antibodies (AGA) in ataxias have been published [32-35].
運動失調において抗グリアジン抗体(AGA)の保有率を観察したいくつかの研究が発表されている。

The common theme in most of these studies is the consistently high prevalence of AGA in sporadic ataxias when compared to healthy controls.
これらの研究のほとんどに共通した論旨は、散発性の運動失調では健康な対照群と比較して抗グリアジンの抗体の保有率が高いということだ。


Pathogenesis
病因

There is evidence to suggest that there is antibody cross-reactivity between antigenic epitopes on Purkinje cells and gluten proteins [36-38].
プルキンエ細胞とグルテンタンパク質それぞれの抗体産生を刺激するエピトープ間には、抗体の交差反応性が存在することを示唆する証拠がある。

※cross-reactive: 交差反応を起こし得る。ある抗原に反応する抗体が、別の抗原にも反応することを交差反応という。上記以外に例えば連鎖球菌のMタンパク質と心筋は共通の抗原決定基をもち、交差反応によりリウマチ熱を引き起こす

※epitope: エピトープ。抗原決定基。T細胞受容体(TCR)やB細胞受容体(BCR)に結合して免疫応答を開始することができる抗原上の部位

※Purkinje cells: プルキンエ細胞。小脳皮質に存在する神経ニューロン

Widespread deposition of transglutaminase antibodies has been found around brain vessels in patients with GA.
グルテン運動失調の患者には、脳の血管の周りに抗トランスグルタミナーゼ抗体の沈着が広範囲に見られることがわかってきている。

The deposition is most pronounced in the cerebellum, pons and medulla.
その沈着が最も目立つのは、小脳、橋(きょう)、延髄においてである。

※pronounce: 発音する、断言する。pronounced 「顕著な、明白な」

Antibodies against tTG6, a primarily brain-expressed transglutaminase, have been found in patients with GA [39-41].
主として脳に発現するトランスグルタミナーゼである組織トランスグルタミナーゼ6(tTG6)に対する抗体が、グルテン運動失調の患者で見つかっている。

In GA and DH, IgA deposits seem to accumulate in the periphery of vessels where in healthy TG6 or TG3, respectively, these are not usually found [42].
グルテン運動失調ではTG6への、疱疹状皮膚炎においてはTG3へのIgA抗体が、それぞれ血管の末梢に蓄積するようである。
これらは通常、健康な状態では見られない。

Using a mouse model, it has recently been shown that serum from GA patients, as well as clonal monovalent anti-tTG Igs derived using phage display, causes ataxia when injected intraventricularly in mice [43].
マウスモデルを使い最近明らかになったのは、グルテン運動失調患者の血清はマウスの脳室内に投与すると運動失調を引き起こすということだ。
これはファージディスプレイを使って複製した一価の抗tTG抗体をマウスの脳室内に投与したのと同様の結果である。

※clonal: 複製の。monoclonal「単クローン性の、モノクローナルの」

※monovalent: 一価の。特定の抗原だけに反応する抗体1種類だけを含む

※phage display: ファージディスプレイ。バクテリオファージ(bacterio phage)の表面に外来タンパク質を発現させるための方法

※intraventricularly: 脳室内に、心室内に

These data therefore provide evidence that anti-tTG Igs (derived from patients) compromise neuronal function in selected areas of the brain, suggesting that this involves an immune-system independent mode of action.
ゆえに、これらのデータは患者由来の抗tTG抗体が脳の限られた領域の神経機能を損なうという証拠となり、また免疫系とは独立した作用機序があるということを示唆している。

※mode of action: 作用機序。mode of 「~の方法(機序)。~の型」


Clinical presentation and diagnosis
臨床像と診断

GA usually presents with pure cerebellar ataxia or, rarely, ataxia in combination with myoclonus, palatal tremor or opsoclonus myoclonus.
グルテン運動失調は一般に小脳の運動失調を伴うが、まれにミオクローヌスや口蓋の振戦、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群を合併する。

※myoclonus: ミオクローヌス。共同筋群が不随意的に短く痙攣すること

※tremor: 振戦(しんせん)。対立筋群による不随意的な律動性振動。3~4Hz、6~7Hz、8~10Hzなど周波数に幅がある

※opsoclonus myoclonus syndrome: 眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群。不随意的に眼球が多方向に往復する衝動性眼球運動(dancing eye)と骨格筋のミオクローヌスを主症状とする

GA is usually of insidious onset with a mean age at onset of 53 years.
グルテン運動失調は知らない間に進行しているのが普通で、発症の平均年齢は53歳である。

Rarely, the ataxia can be rapidly progressive.
まれに、運動失調が急速に進行することもあり得る。

Gaze-evoked nystagmus and other ocular signs of cerebellar dysfunction are seen in up to 80% of cases.
注視眼振と、小脳の機能障害による他の視覚の徴候が、患者の80%までで見られる。

※gaze-evoked nystagmus: 注視眼振。注視したときに現れる不随意的な眼球の往復運動

All patients have gait ataxia, and the majority have limb ataxia.
全ての患者に歩行失行があり、大多数は四肢失調である。

※gait ataxia: 歩行失行。歩行で下肢がうまく使えない状態

※limb ataxia: 四肢失調。upper limb ataxia「上肢失調」、lower limb ataxia「下肢失調」

Less than 10% of patients with GA will have any gastrointestinal symptoms, but a third will have evidence of enteropathy on biopsy.
グルテン運動失調患者で何らかの消化管の症状を示すのは10%未満だが、生検では3分の1に腸の疾患があることが明らかになっている。

※a third: 3分の1。two thirds of 「~の3分の2」

Nevertheless, an intestinal biopsy is indicated when serum tTG2 antibodies are elevated.
それにもかかわらず、腸の生検を指示するのは血清中の抗tTG2抗体が上昇した時である(神経障害が理由の場合が多いため)。

※indicate: <医学上の徴候が><必要な療法を>指示する、~の適応がある

Up to 60% of patients have neurophysiological evidence of sensorimotor, length-dependent axonal neuropathy.
患者の60%までが感覚運動性で長さ依存的な軸索性の神経障害を持つという、神経生理学的なエビデンスがある。

※sensorimotor: 感覚運動の。感覚と運動、もしくは感覚中枢と運動中枢の両方をさす

※length-dependent: 長さ依存的な。長い神経ほど障害されやすい状態。糖尿病による神経障害もこのような性質を持つ

※axonal neuropathy: 軸索性の神経障害。軸索とは、核のある神経細胞体から末端まで情報や物質を送るための長い突起のこと

This is usually mild and does not contribute to the ataxia.
この神経障害は通常は軽症で、運動失調には寄与しない。

Up to 60% of patients with GA have evidence of cerebellar atrophy on magnetic resonance imaging.
グルテン運動失調症患者の60%までが、核磁気共鳴画像法(MRI)で小脳が明らかに萎縮している。

※atrophy: 萎縮。hypertrophy 「肥大」

Even in those patients without cerebellar atrophy, a proton magnetic resonance spectroscopy of the cerebellum is abnormal.
核磁気共鳴画像法では小脳の萎縮がない患者でさえ、陽子磁気共鳴分光法では(代謝が)異常である。

※magnetic resonance spectroscopy (MRS): 磁気共鳴分光法。MRIでは水や脂肪を画像化するが、MRSでは様々な原子を高い周波数分解能で計測する。細胞の代謝や活性化の度合いについての情報を得ることができる


The response to treatment with a GFD depends on the duration of the ataxia prior to the diagnosis of GS.
グルテン運動失調患者がグルテン除去食(GFD)による治療に反応するかどうかは運動失調の存続期間に依存し、それはグルテン感受性(GS)の診断よりも重要である。

Loss of Purkinje cells in the cerebellum, the end result of prolonged gluten exposure in patients with GA, is irreversible and prompt treatment is more likely to result in improvement or stabilization of the ataxia.
グルテン運動失調の患者が長期にわたってグルテンに曝露した最終的な結果として、小脳においてプルキンエ細胞が失われる。
この喪失は不可逆であり、迅速な治療により改善、もしくは症状の安定につながる可能性がより高くなる。


The diagnosis of GA is not as straightforward as that of CD.
グルテン運動失調の診断は、セリアック病の診断ほど簡単ではない。

Anti-tTG2 IgA antibodies are only present in up to 38% of patients, but often at lower titers than those seen in patients with CD.
tTG2に対するIgA抗体は患者の38%に存在するだけだが、セリアック病で見られるそれよりも低力価なことがしばしばである。

However, unlike CD, IgG class antibodies to tTG2 are more frequent than IgA.
にもかかわらず、セリアック病とは異なり、tTG2に対するIgA抗体よりもIgGクラス抗体が頻繁に見られる。

Antibodies against tTG2 and tTG6 combined can be found in 85% of patients with ataxia who are positive for AGA antibodies [41].
抗tTG2抗体と抗tTG6抗体の組み合わせが、抗グリアジン抗体(AGA)陽性の運動失調患者の85%で見つかる。

It is unclear at present whether combined detection of anti-tTG2 and anti-tTG6 IgA and IgG without the use of AGA identifies all patients with gluten ataxia.
抗グリアジン抗体を使わず、抗tTG2と抗tTG6のIgA・IgG抗体を組み合わせて検出することでグルテン運動失調の全患者を同定できるかどうかは、現在のところ明らかではない。


The current recommendation is that patients presenting with progressive cerebellar ataxia should be screened for GS using AGA IgG and IgA, anti-tTG2 antibodies and, if available, IgG and IgA anti-tTG6 antibodies.
進行性の小脳運動失調を呈する患者は、グルテン感受性(GS)の発見を目的としたスクリーニングを受けることが望ましい。
現在推奨されているのは、抗グリアジンIgA・IgG抗体、抗tTG2抗体、そしてもし可能なら、抗tTG6のIgA・IgG抗体の検出である。

Patients with positive anti-tTG2 antibodies should undergo a duodenal biopsy.
抗tTG2抗体が陽性の患者は、十二指腸の生検を受けなくてはならない。

However, irrespective of the presence of an enteropathy, patients positive for any of these antibodies with no alternative cause for their ataxia should be offered a strict GFD with regular follow-up to ensure that the antibodies are eliminated, which usually takes six to twelve months.
しかし、腸の疾患の存在とは関係なく、これらの抗体のいずれであれ陽性で、運動失調の他の代わりの原因がない患者には、厳密なグルテン除去食を提案するべきである。
そして定期的な追検査を実施し、通常6ヶ月から12ヶ月かかる抗体の消失を確かめる必要がある。

※follow-up: 追跡して行う検査や治療。follow-up study「追跡研究」

Stabilization or even improvement of the ataxia after one year would be a strong indicator that the patient suffers from GA.
1年後に運動失調が安定することは、あるいは改善でさえも、患者がグルテン運動失調を患っていることの強い指標になるだろう。
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by travelair4000ext | 2012-12-24 23:06 | 翻訳  

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