アルコールとタイトジャンクション

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10198341

http://ajpgi.physiology.org/content/276/4/G965.short

Ethanol modulation of intestinal epithelial tight junction barrier
エタノールは腸上皮タイトジャンクションバリアを調節する




Thomas Y. Ma, Don Nguyen, Vuong Bui, Hanh Nguyen, and Neil Hoa
トーマス Y.Ma、ドン・グエン、ヴォン・ブイ、ハン・グエン、ニール・ホア

1) Division of Gastroenterology, Department of Medicine, Department of Veterans Affairs Medical Center, Long Beach 90822; and University of California Irvine, Irvine, California 92717
退役軍人医療センター医学科消化器内科、カリフォルニア州ロングビーチ90822
カリフォルニア大学アーバイン校、カリフォルニア州アーバイン92717

Submitted 2 June 1998. accepted in final form 5 January 1999.
投稿1998年6月2日、最終形での受理1999年1月5日

Abstract
要旨

Previous studies have shown that high concentrations of ethanol (≧40%) cause functional damage of the gastrointestinal epithelial barrier by direct cytotoxic effect on the epithelial cells.
以前の研究では、高濃度のエタノール(40%以上)は胃腸の上皮細胞を直接的に傷害し、上皮バリアの機能的な損傷を引き起こすことが示されていた。

The effects of lower noncytotoxic doses of ethanol on epithelial barrier function are unknown.
それより低い、細胞を傷害しない程度のエタノール量が上皮バリア機能へ与える影響は知られていない。

A major function of gastrointestinal epithelial cells is to provide a barrier against the hostile substances in the gastrointestinal lumen.
胃腸の上皮細胞の主な機能は、胃腸内の好ましくない物質に対するバリアを提供することである。

The apicolaterally located tight junctions (TJs) form a paracellular seal between the lateral membranes of adjacent cells and act as a paracellular barrier.
頂部から側方にかけて位置するタイトジャンクション(TJ)は、隣り合う細胞の側方の膜と膜の間を塞ぎ、細胞の傍らを通過できないようにバリアとしてはたらく。

※tight junction: 密着結合。zonula occludens 「閉鎖帯」

In this study, we investigated the effects of lower doses of ethanol on intestinal epithelial TJ barrier function using filter-grown Caco-2 intestinal epithelial monolayers.
この研究で我々が調べたのは、より低い用量のエタノールが腸上皮タイトジャンクションバリア機能へ与える影響である。
使用したのは腸上皮の単層フィルターとして培養したCaco-2である。

※Caco-2: ヒト結腸癌に由来する細胞株。caco- 「悪い」「病的な」

The Caco-2 TJ barrier function was assessed by measuring epithelial resistance or paracellular permeability of the filter-grown monolayers.
上皮電気抵抗、または単層培養フィルターの傍細胞透過性を計測することにより、Caco-2のタイトジャンクションバリア機能を検討した。

Ethanol (0, 1, 2.5, 5, 7.5, and 10%) produced a dose-related drop in Caco-2 epithelial resistance and increase in paracellular permeability.
エタノール (0、1、2.5、5、7.5、10%) は、用量依存的にCaco-2の上皮抵抗を低下させ、傍細胞透過性を上昇させた。

Ethanol also produced a progressive disruption of TJ protein (ZO-1) with separation of ZO-1 proteins from the cellular junctions and formation of large gaps between the adjacent cells.
エタノールは細胞どうしの結合からタイトジャンクションタンパク質であるZO-1を分離させて連続的にタイトジャンクションも破損し、隣り合う細胞の間に大きな割れ目を作り出した。

Ethanol, at the doses used (≦10%), did not cause cytotoxicity (lactate dehydrogenase release) to the Caco-2 cells.
エタノールは、実験で使用した用量では、Caco-2細胞に細胞毒性(乳酸脱水素酵素の放出)を引き起こさなかった。

Ethanol produced a disassembly and displacement of perijunctional actin and myosin filaments from the perijunctional areas.
エタノールは傍接合部からアクチンフィラメント・ミオシンフィラメントを分解して排除した。

On ethanol removal, actin and myosin filaments rapidly reassembled at the cellular borders.
エタノールを除去すると、アクチンフィラメント・ミオシンフィラメントは細胞のふちへ急速に再び集合した。

Ethanol stimulated the Caco-2 myosin light chain kinase (MLCK) activity but did not affect the MLCK protein levels.
エタノールはCaco-2細胞のミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)の活性を刺激したが、MLCKタンパク質の濃度には影響しなかった。

Specific MLCK inhibitor ML-7 inhibited both ethanol increases in MLCK activity and TJ permeability without affecting the MLCK protein levels.
MLCK特異的な阻害剤であるML-7は、エタノールによるMLCK活性の上昇を阻害し、タイトジャンクション透過性の上昇も阻害したが、MLCKタンパク質の濃度には影響しなかった。

Consistent with these findings, metabolic inhibitors sodium azide and 2,4-dinitrophenol significantly prevented ethanol-induced increase in Caco-2 TJ permeability, whereas cycloheximide or actinomycin D had no effect.
これらの研究成果と一致して、エタノールにより誘発されるCaco-2細胞のタイトジャンクション透過性の上昇は、代謝阻害剤であるアジ化ナトリウムと2,4-ジニトロフェノールにより著しく阻害されたが、一方、シクロヘキシミドとアクチノマイシンDには何ら影響を受けなかった。

※sodium azide: アジ化ナトリウム。シトクロムCオキシダーゼ、カタラーゼ、H+ATPアーゼなどを阻害して細胞毒性を示す

※2,4-dinitrophenol: 2,4-ジニトロフェノール。膜を通してプロトンを透過させミトコンドリアのATP生成を阻害する

※cycloheximide: シクロヘキシミド。抗生物質。真核生物のリボソームに結合してペプチド鎖伸長を阻害し、タンパク質合成を停止させる

※actinomycin D: アクチノマイシンD。抗癌剤。DNAのグアニンに結合してRNAポリメラーゼを阻害し、mRNA転写を抑制する

※Consistent with these findings: 前者のようにミトコンドリアによるATP生成の阻害は結果に影響し、後者のように核からのタンパク質生成の阻害は影響しない。つまり、前者からはMLCKのキナーゼ活性が関与していることが示唆され、後者からはMLCKの濃度が関与していないことが示唆される

※kinase: キナーゼ。ATPなどから末端のリン酸基を水以外の化合物に転移する反応を触媒する酵素の総称

The results of this study indicate that ethanol at low noncytotoxic doses causes a functional and structural opening of the Caco-2 intestinal epithelial TJ barrier by activating MLCK.
この研究の結果が示すのは、エタノールは細胞毒性のない低濃度でもCaco-2腸上皮タイトジャンクションバリアを機能的にも構造的にも開放するということである。
そしてそれはMLCKの活性化による。
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by travelair4000ext | 2013-02-13 06:13 | 翻訳  

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