乳製品と糖尿病05

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AMINO ACID-TORC1/S6K1-INDUCED INSULIN RESISTANCE
アミノ酸 - TORC1/S6K1経路 - により引き起こされるインスリン抵抗性




Insulin resistance and obesity, as well as obesity-related insulin resistance, are major factors promoting the development of T2D.
インスリン抵抗性と肥満は、肥満に関連したインスリン抵抗性と同じく、2型糖尿病の発症を促進する主な要因である。

Insulin resistance of muscle cells, adipose tissue and liver results in raised circulating glucose levels increasing the metabolic and secretory burden of β-cells, which have to respond by increased insulin synthesis and secretion[55,56].
筋肉細胞と脂肪組織、そして肝臓のインスリン抵抗性は、その結果として循環するグルコース濃度を上昇させる。
それにより膵臓β細胞はインスリンの合成と分泌の上昇に反応しなければならず、代謝の負荷と分泌の負荷が増加する。



It is known that glucose robustly activates mTORC1 in an amino acid-dependent manner in rodent and human islets[57].
人間とげっ歯類の膵島においてグルコースはmTORC1を激しく活性化するが、それはアミノ酸に依存的な方法であることが知られている。

In pancreatic β-cells, leucine acutely stimulates insulin secretion by serving as both metabolic fuel and allosteric activator of glutamate dehydrogenase (GDH) to enhance glutaminolysis.
ロイシンは、膵臓β細胞のインスリン分泌を急速に刺激する。
ロイシンは、代謝燃料としても、そしてグルタミン酸脱水素酵素 (GDH) のアロステリックな活性因子としても働き、グルタミノリシスを促進する。

※metabolic fuel: 代謝燃料。代謝されることでエネルギーが生じる

※glutamate dehydrogenase (GDH): グルタミン酸脱水素酵素。グルタミン酸、H2O、NAD+から、α-ケトグルタル酸、アンモニア、NADHを生じる反応、またはその逆の反応を触媒する酵素

※allosteric: アロステリックな。酵素の活性部位以外の部位に基質が結合することによりタンパク質の立体構造が変化し、酵素の活性やリガンドの結合が影響を受ける。allo- 「異なる」、ster(eo) 「固い、固体の、立体の」
ロイシンによるグルタミン酸脱水素酵素のアロステリック制御機構の解明 (東京大学農学生命科学研究科 2011/11) を参照

※glutaminolysis: グルタミノリシス (グルタミン分解)。グルタミン (glutamine) は、グルタミン酸 (glutamate) からα-ケトグルタル酸になってTCA回路に入り、さらに、リンゴ酸 (malate) 、ピルビン酸 (pyruvate) を経由して、最終的には乳酸 (lactate) が作られる。



※ロイシンは、BCAT (分枝鎖アミノ酸トランスアミナーゼ) によりα-ケトグルタル酸 (2-オキソグルタル酸) へアミノ基を転移してグルタミン酸を生成し、自身は分岐鎖ケト酸 (BCKA) の2-オキソイソカプロン酸に変化する。
さらに、BCKDC (分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素複合体) により酸化的脱炭酸を受け、ロイシンは最終的にアセト酢酸とアセチルCoAになる。生じたグルタミン酸は、GDH (ロイシンによって活性化される) によりα-ケトグルタル酸になる。
→Wikipedia 「アミノ酸の代謝分解

Moreover, leucine has been shown to regulate gene transcription and protein synthesis in pancreatic β-cells via mTORC1-dependent and -independent pathways[58].
さらに、ロイシンは膵臓のβ細胞において、mTORC1に依存的および非依存的な経路により、遺伝子の転写とタンパク質の合成を調節することが示されている。

※mTORC1-dependent and -independent pathways[58]: mTORC1依存的経路と非依存的経路。
参照先の [58] ("Leucine metabolism in regulation of insulin secretion from pancreatic beta cells.") には、mTORC1に非依存的な経路については次のように書かれている。
「p70S6Kの活性化は、mTORに依存しないメカニズムにより達成しうる」
「ロイシン除去におけるタンパク質合成の低下は、eIF4Eの利用可能性の低下が決定因子ではない」
「ロイシンから細胞増殖にはmTORC1とPKC/ERK1/2シグナルの両方が関与」
とある。
さらに、ロイシンを除去するとmTORC1-S6K1によるリン酸化とインスリン抵抗性は減少するが、タンパク質の合成つまりIRS-1の発現も低下し、インスリンシグナルの経路それ自体が減弱しうる。

[58の図1] 「ミトコンドリアでのATP合成低下が、肥満によるインスリン抵抗性状態下での膵島機能不全の進行における中心イベントである」
 高脂血症→UCP2↑→プロトン濃度勾配↓→ATP合成↓
 炎症性サイトカイン→誘導型NO合成酵素↑→電子伝達系を阻害→ATP合成↓
 高脂血症/高血糖→ATP合成βサブユニット↓, 酸化ストレス↑→ATP合成酵素活性↓→ATP合成↓
   →ATP合成↓ (つまりROS↑)→インスリン分泌↓, アポトーシス↑

[58の図2] 「ロイシンがGDH活性を制御し、他の重要な代謝遺伝子を上方調節するメカニズムは、急激かつ慢性的にインスリン分泌に関与する」
 ロイシン→GDH活性化/酸化/mTOR依存経路/mTOR非依存経路
   →インスリン分泌↑ /タンパク質合成↑ /遺伝子発現 /β細胞代謝の制御






Activated mTORC1 phosphorylates important substrates involved in the regulation of the translational machinery, the p70 S6 kinases (S6Ks), which phosphorylate ribosomal protein S6, and eukaryotic initiation factor (eIF) 4E-binding proteins (4E-BPs), which control the activity of the translation factor eIF4E that binds to the 5’-cap structure of eukaryotic mRNAs, thereby facilitating ribosome recruitment[25,28].
活性化したmTORC1は、翻訳装置の調節に関与する重要な基質であるS6Kと4E-BPをリン酸化する。
p70 S6キナーゼ (S6K)は、リボソームを構成するタンパク質であるS6をリン酸化する。
真核生物翻訳開始因子 (eIF) の4Eに結合するタンパク質 (4E-BP) は、翻訳因子であるeIF4Eの活性を制御する。
eIF4Eは、真核生物mRNAの5'末端にあるキャップ構造に結合するため、リボソームのmRNAへのリクルートを促進する。

※mTORC1 → S6K → S6 (リボソーム)

※mTORC1 ─┤ 4E-BP ─┤ eIF4E (翻訳開始因子) → リボソームmRNAリクルート (翻訳開始)






Phosphorylation of insulin receptor substrate (IRS)-proteins on serine residues has emerged as a key step to control insulin signaling.
インスリン受容体基質 (IRS) タンパク質のセリン残基のリン酸化は、インスリンシグナルを制御する上で重要なステップであることが明らかになっている。

Among the growing list of IRS kinases implicated in the development of insulin resistance, the mTORC1-activated downstream kinase S6K1 plays a major role[59,60].
インスリン抵抗性の発生に関与するIRSキナーゼのリストは増えつつあるが、その中でもmTORC1により活性化される下流のキナーゼS6K1が中心的な役割を演じる。

S6K1-induced phosphorylation of IRS-1 mediates an important feed back mechanism, which downregulates insulin/IGF-1 signaling and is the molecular basis for insulin resistance, a characteristic feature of obesity and T2D[56,57].
S6K1が引き起こすIRS-1のリン酸化は、インスリン/IGF-1シグナルを抑制する方向へ調節するという重要なフィードバック・メカニズムを介在する。
そしてS6K1が引き起こすIRS-1のリン酸化は、インスリン抵抗性の分子的な基盤である。
インスリン抵抗性は肥満と2型糖尿病の特徴である。

mTORC1 and its downstream target S6K1 are thus critical regulators in mediating the nutrient effects on insulin resistance[61,62] (Figure.4).
ゆえに、mTORC1とその下流の標的であるS6K1は、栄養がインスリン抵抗性に対して影響を与える過程での調節因子として重要である (Figure.4)。


S6K1 negatively modulates insulin signaling by phosphorylating Ser-307 of IRS-1[63].
S6K1は、IRS-1の307番目のセリン残基をリン酸化することにより、インスリンシグナルを抑制する。

Remarkably, absence of S6K1 protected S6K1-/- mice against age- and high fat-diet induced obesity while enhancing insulin sensitivity, pointing to the crucial role of the mTORC1-S6K1 pathway in the regulation of insulin signaling and induction of nutrient-induced insulin resistance due to hyper-activated mTORC1/S6K1[64].
注目すべきことに、S6K1遺伝子をノックアウトしたマウスは、加齢による肥満と高脂肪食による肥満に抵抗を示した一方、インスリン感受性は亢進した。
このS6K1を欠損させる実験は、インスリンシグナルの調節においてmTORC1-S6K1経路が果たす重要な役割を示した。
加えて、栄養過剰がmTORC1/S6K1を過剰に活性化させることで起きるインスリン抵抗性の上昇においてもである。

Recently, another S6K1 IRS-1 phosphorylation site, Ser-1101, has been identified in nutrient and obesity-induced insulin resistance[65].
最近、栄養と肥満が引き起こすインスリン抵抗性において、S6K1がIRS-1をリン酸化する別の箇所 (セリン1101残基) が同定されている。



Insulin and IGF-1-stimulated PI3K/Akt-mediated nuclear extrusion of FoxO1 has also been shown to increase insulin resistance.
インスリンとIGF-1により刺激されたPI3K/Aktが介するFoxO1の核排出もまた、インスリン抵抗性を増大させることが示されている。

Cytoplasmic FoxO1 binds to TSC2, thereby dissociating the TSC1/TSC2 complex, resulting in Rheb-mediated mTORC1-S6K1 activation[51].
核から細胞質に排出されたFoxO1は、TSC2に結合する。
それによりTSC1/TSC2複合体は解離し、結果としてRhebが介するmTORC1-S6K1経路は活性化する。



It has recently been shown in women with gestational diabetes that chronically increased S6K1 in skeletal muscle is associated with impaired glucose tolerance postpartum[66].
最近、妊娠糖尿病の女性において骨格筋で慢性的に増加したS6K1が、出産後の耐糖能異常と関連していることが示されている。

The serine residues implicated in the negative feed back regulation of S6K1 are located at the PTB domain in close proximity to Tyr-phosphorylated consensus motifs at the C-terminus of IRS-1[63].
S6K1による負のフィードバック的な調節に関与するセリン残基は、IRS-1のC末端、チロシンリン酸化される共通配列のすぐ近くにあるPTBドメインに位置している。

※consensus motif: 共通して現れる配列。consensus 「一致」、motif 「繰り返し再現される主題」

※PTB (PhosphoTyrosine-Binding) domain: ホスホチロシン結合ドメイン。リン酸化したチロシンを特異的に認識して結合するドメイン

Such phosphorylations result in dissociation of insulin receptor/IRS-1 complexes concomitant with an inhibition of downstream effectors to dock and bind IRS-1, thereby downregulating insulin signaling[63].
そのようなリン酸化は結果としてインスリン受容体とIRS-1複合体を解離させ、同時に下流のエフェクター分子がIRS-1に結合するのを阻害する。
それゆえに、インスリンシグナルを抑制する。






Intriguingly, it has been shown in humans that insulin resistance was induced by infusion of high concentrations of amino acids, whereas the mTORC1 inhibitor rapamycin improved insulin action[67].
興味深いことに、ヒトにおいて高濃度のアミノ酸の注入はインスリン抵抗性を引き起こし、一方mTORC1阻害剤であるラパマイシンはインスリン作用を改善したことが示されている。

Infusion of an amino acid mixture to healthy men resulted in plasma amino acid elevation, hyperinsulinemia and marked activation of S6K1 with increased inhibitory IRS-1 phosphorylation at Ser-312 and Ser-636/639[68].
アミノ酸の混合物を健康な男性に注入したところ、血漿アミノ酸は上昇し、高インスリン血症とS6K1の著しい活性化が見られた。
それは同時に、IRS-1を阻害するセリン312とセリン636/639のリン酸化の増加を伴っていた。

Amino acid infusion (containing 8.9 g/L leucine) impaired insulin-mediated suppression of glucose production and insulin-stimulated glucose disposal in skeletal muscle.
アミノ酸の注入 (1リットルあたり8.9グラムのロイシンを含有) は、インスリンによる糖新生の抑制と、インスリン刺激による骨格筋のグルコース取り込み、どちらも低下させた。

Incubation of rat skeletal muscle with higher concentrations of both leucine and glucose caused insulin resistance, which was associated with a decrease in AMPK activity[69].
ロイシンとグルコースを両方とも高濃度でラットの骨格筋を培養するとインスリン抵抗性が起きたが、それはAMPK活性の低下と関連していた。






Amino acid-mediated mTORC1- and S6K1-activation plays a crucial role in the negative regulation of IRS-1 phosphorylation, resulting in amino acid-induced insulin resistance[68].
アミノ酸が介するmTORC1とS6K1の活性化は、IRS-1リン酸化による抑制的な調節において重要な役割を演じる。
結果としてアミノ酸によるインスリン抵抗性が起きる。

In accordance with these findings are feeding studies of rats with a high fat diet supplemented with BCAAs exhibiting chronic mTOR-mediated phosphorylation of IRS-1 at Ser-307, which was reversed by rapamycin treatment[70].
これらの知見と一致して、BCAAを加えた高脂肪食をラットに与える研究では、IRS-1のセリン307残基がmTORにより慢性的なリン酸化を示し、それはラパマイシン処理により打ち消された。

Moreover, the dietary pattern that includes high fat consumption accompanied with high amounts of BCAAs appears to contribute to obesity-associated insulin resistance[70].
さらに、大量のBCAAを伴い脂肪を多く消費する食事のパターンは、肥満に関連するインスリン抵抗性の原因になるようである。






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S6K1- VS IKKβ-MEDIATED INSULIN RESISTANCE
S6K1によるインスリン抵抗性 VS IKKβによるインスリン抵抗性

※IKK (IκB kinase): IκBα (Inhibitor κB) をリン酸化して分解させるキナーゼ。IKKβはIKKサブユニット (α、β、γ) の一つ

Most patients with T2D are obese and the global epidemic of obesity largely explains the dramatic increase in the incidence of T2D over the past 20 years[71].
2型糖尿病の患者の多くは肥満である。
肥満の世界的な増加は、過去20年にわたって2型糖尿病の発症が劇的に増加してきた理由の大部分を説明する。

Obesity-mediated insulin resistance is a major risk factor for the development of T2D.
肥満によるインスリン抵抗性は、2型糖尿病を発症するための主要なリスクである。

Individuals with visceral obesity release increased levels of tumor necrosis factor α (TNFα) into their systemic circulation produced by adipose-tissue resident macrophages[72].
内臓肥満の人々は、脂肪組織のマクロファージにより産生される腫瘍壊死因子α (TNFα) の全身循環系 (体循環) への放出が増加している。

The TNFα/IKKβ pathway plays a pivotal role in TNFα-induced insulin resistance[17,73-75].
TNFα/IKKβ経路は、TNFαによるインスリン抵抗性の主軸である。

In addition to S6K1, Ser-307 has been implicated as the potential IKKβ phosphorylation site of IRS-1[75,76].
S6K1に加えて、セリン307残基は、IKKβによるIRS-1の潜在的なリン酸化箇所として関与している。






Intriguingly, IKKβ physically interacts with and phosphorylates TSC1, thereby suppressing TSC1, which results in mTORC1 activation[77].
興味深いことに、IKKβは物理的にTSC1と相互作用し、TSC1をリン酸化する。
それによりIKKβはTSC1を抑制し、結果としてmTORC1を活性化する。

TNFα/IKKβ/TSC1/Rheb-mediated activation of mTORC1 is thus a most conceivable mechanism for obesity-mediated TNFα-mTORC1 activation and signaling to pancreatic β-cells amplifying mTORC1-S6K1-mediated and IKKβ-mediated insulin resistance by phosphorylation of IRS-1 Ser 307.
TNFα/IKKβ/TSC1/Rheb経路によるmTORC1活性化は、したがって、肥満によるTNFα-mTORC1活性化にとって最も考えられうるメカニズムであり、膵臓β細胞へmTORC1活性化シグナルを伝える。
TNF-αによるmTORC1活性化は、IRS-1セリン307残基をリン酸化することで、mTORC1-S6K1によるインスリン抵抗性を増幅し、そしてIKKβによるインスリン抵抗性を増幅する。

※内臓肥満 → [マクロファージ] TNF-α → IKKβ → TSC1リン酸化 → Rheb → mTORC1 → S6K1 → IRS-1セリン307リン酸化→ インスリン抵抗性

Visceral obesity thus augments β-cell mTORC1 signaling, insulin secretion and contributes to insulin resistance.
内臓肥満は、したがって、β細胞のmTORC1シグナルとインスリン分泌を促進し、インスリン抵抗性の原因となるのである。
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by travelair4000ext | 2013-04-17 15:54 | 翻訳  

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