乳製品と糖尿病08

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3310004/#__sec14title

LEUCINE-TORC1-STIMULATED β-CELL PROLIFERATION AND EARLY β-CELL SENESCENCE
ロイシン-TORC1-により刺激されるβ細胞の増殖と、早すぎる老化




The Western diet provides ideal conditions for exaggerated mTORC1 activation.
西洋的な食事は、mTORC1を過剰に活性化するためには最適である。

This hyperglycemic, insulinotropic and leucine-rich diet offers abundant glucose, insulinotropic dairy proteins with rising amounts of leucine over the last decades by increased meat and dairy protein consumption (Figures1-3).
この「高血糖を引き起こし、インスリン分泌を促進する、ロイシンに富んだ食事」は、豊富なグルコースと、ロイシンの多いインスリン分泌促進的な乳製品タンパク質を提供する。
これはここ数十年にわたって、肉と乳製品のタンパク質の消費が増えたことによる (Figures1, Figure2, Figure3)。

The simultaneous availability of high levels of glucose, insulin, IGF-1 and leucine especially result in maximal mTORC1 stimulation, leading to increased β-cell proliferation.
高濃度のグルコース、インスリン、IGF-1、ロイシン、それらが同時に利用できることは、結果として特にmTORC1を最大限に刺激し、β細胞の増殖が上昇することにつながる。

However, persistently over-stimulated β-cell proliferation holds the risk of early onset of replicative β-cell senescence.
しかし、β細胞の増殖をしつこく過剰に刺激することは、「複製によるβ細胞の老化」を早期に発症するリスクを高いままに保つ。

The risk for T2D would be low when senescent or functionally impaired β-cells are replaced by stem cell-driven β-cell neogenesis.
もし、幹細胞を駆り立ててβ細胞を新生させることで老化や機能不全を起こしたβ細胞を置き換えられるなら、2型糖尿病のリスクは低かったかもしれない。

However, recent studies[110,111] in rodents clearly confirmed that adult β-cells are not replaced by stem cell-driven neogenesis but by self-duplication of differentiated β-cells.
しかし、大人のβ細胞は幹細胞による細胞新生によっては置き換えられず、分化したβ細胞の自己複製によることが、齧歯類による最近の研究で明らかになった。

※recent studies: 2004年のNature参照。
2010年のNatureでは、通常のβ細胞は寿命が長くほとんど分裂しないが、代謝的需要の増大や傷害によりβ細胞が大量に死滅したときに (インスリンを与えれば) α細胞が増えてβ細胞に分化すると報告されている。
さらに2012年のCellでは、FoxO1欠損β細胞マウスにおいては様々なストレス条件下でβ細胞が脱分化して、α細胞などに再び分化することが報告された。
膵臓の細胞には以上のような「可塑性 plasticity」があるだろうと神戸大学の南氏はまとめている。
2013年のDiabetesによれば、G1/S期に関与する分子は確かにβ細胞にあるが、静止期のβ細胞ではCDKなどの肝心の分子は核ではなく細胞質にあって分裂に抵抗性であると報告されている

This finding is of fundamental biological importance because the rate of cell divisions limits the life and function of a somatic cell by induction of replicative cell senescence according to the Hayflick limit[112].
この発見は、生物学的に非常に重要である。
なぜなら、細胞分裂の速度が体細胞の寿命と機能とを制限するからである。
細胞は複製すればするほど、ヘイフリック限界に従って老化を引き起こす。

※Hayflick limit: ヘイフリック限界。ヒトの正常な細胞は決まった回数しか分裂しない。線維芽細胞の正常な二倍体では約50回

In fact, both increased β-cell proliferation and β-cell apoptosis are characteristic hallmarks of β-cell mass disturbance in T2D when compared with non-diabetic subjects[101,102].
事実、健常者と比較して2型糖尿病においてはβ細胞の量が異常であり、特徴としてβ細胞の増殖の増加とβ細胞のアポトーシス、そのどちらもが見られる。

There is recent experimental evidence for the proposed concept of mTORC1-driven early β-cell senescence and apoptosis in T2D.
最近、2型糖尿病ではmTORC1が早すぎるβ細胞の老化とアポトーシスを強制的に引き起こしているというコンセプトが提案され、その実験的なエビデンスも存在する。

Mice, specifically deficient in TSC2 in pancreatic β-cells (βTSC2-/- mice), exhibit hyperactivated mTORC1 signaling with increased IGF-1 dependent phosphorylation of S6K1 and 4E-BP1[113].
特異的に膵臓β細胞でだけTSC2を欠損したマウス (βTSC2-/- mice) は、mTORC1シグナルが過剰な活性化を示し、IGF-1依存的なS6K1と4E-BP1のリン酸化が増加した。

At young ages (< 28 wk), these mice exhibit hypoglycemia and hyperinsulinemia associated with increased islet cell mass and increased sizes of individual β-cells.
若い (28週齢未満) 時点では、これらのマウスは膵島細胞量の増加および個々のβ細胞のサイズ上昇と関連して、低血糖症と高インスリン血症を示す。

After 40 wk of age, however, βTSC2-/- mice develop progressive hyperglycemia and hypoinsulinemia accompanied by a reduction in islet mass due to a decrease in the number of β-cells[113].
しかし40週齢を超えると、βTSC2-/-マウスは進行性の高血糖症と低インスリン血症を発症し、β細胞数の減少による膵島の量の減少を伴う。

This intriguing animal model of T2D strongly supports the concept of early β-cell senescence and apoptosis due to increased activity of mTORC1 in the induction phase of T2D.
この興味深い2型糖尿病モデル動物は、2型糖尿病の誘導期にはmTORC1活性の上昇によるβ細胞の早すぎる老化とアポトーシスが起きているというコンセプトを強く支持するものである。

Furthermore, this model provides an excellent explanation for the relationship between low birth weight and increased risk for T2D in adult life[114,115].
さらに、この動物モデルは低出生体重と成人時2型糖尿病リスクの上昇との間の関連について、優れた説明を提供する。

Accelerated or “catch-up” postnatal growth in response to small birth size is thought to presage disease years later.
生まれた時の大きさが小さいことへの応答としての、促進される、もしくは 「追いつこうとする」 生後の成長は、何年もたってからの疾患の前兆となる。

Recent studies in FASDEL (fatty acid synthase heterozygous) mice, a model of intrauterine growth restriction, allowed the conclusion that increased β-cell mass developed in response to decreased body size[116].
最近のFASDEL (脂肪酸合成酵素ヘテロ) マウス (子宮内での成長を制限させる動物モデル) における研究からは、体のサイズが小さいことへの応答としてβ細胞の量の増加がより進行するという結論を出してもよいと思われる。

※allow: 許す、認める。の余地がある (of...)

FASDEL mice are born small yet have expanded β-cell mass and increased insulin secretion without insulin resistance.
FASDELマウスは小さく生まれるが、β細胞の量は膨張しており、インスリン分泌は増加し、インスリン抵抗性はない。

However, β-cell hyperfunction in early life resulted in β-cell failure with advanced age[116].
しかし、生まれて早くからのβ細胞の機能過剰は、結果として高齢時にβ細胞の機能不全を起こす。






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HYPER-ACTIVATED TORC1 AND ENDOPLASMIC RETICULUM STRESS
過剰に活性化するTORC1と、小胞体ストレス

The endoplasmic reticulum (ER) is a cellular organelle responsible for multiple important cellular functions, including the biosynthesis and folding of newly synthesized proteins destined for secretion, such as insulin.
小胞体 (ER) は 細胞内小器官 (オルガネラ) であり、複数の重要な細胞機能を担う。
機能とは新しく合成されるタンパク質の生合成やタンパク質の折りたたみなどであり、例えばインスリンは小胞体を経て分泌されることになる。

※organelle: 細胞内小器官。ラテン語のorganella (organの指小形) から。核以外の、ミトコンドリアや葉緑体、リボソームなど

※folding: タンパク質の折りたたみ

The ER participates in all branches of metabolism, linking nutrient sensing to cellular signaling.
小胞体は代謝の全ての細部に関わり、栄養素を感じ取って細胞シグナルへとつなげる。

Leucine-mediated hyperactivation of mTORC1 resulting in excessive protein (insulin, islet amyloid protein) synthesis and exaggerated mTORC1-SREBP-induced lipid synthesis may overload the functional capacity of the ER resulting in ER stress[28,30,87,105,106].
ロイシンが媒介するmTORC1の過剰な活性化は、結果としてインスリンや膵島アミロイドタンパク質などのタンパク質を過剰に合成させ、mTORC1-SREBP経路により脂質を過剰に合成させる。
このような過剰な活性化は、小胞体の機能的な容量に負担をかけすぎる可能性があり、小胞体ストレスという結果に至る。

※islet amyloid polypeptide (IAPP): 膵島アミロイドポリペプチド。膵島に沈着するアミロイドの主要構成成分であり、アミノ酸37残基から成る。アミリンとも。
アミノ酸残基の20位から29位まではβシート構造を取り、沈着を起こすために重要である。アミリンの血漿濃度は食後やグルコース負荷時に上昇するが、強いインスリン抵抗性の状態では膵島にアミロイド (類デンプン質) が沈着する

ER stress triggers an adaptive signaling cascade, called the unfolded protein response (UPR), to relieve this stress.
小胞体ストレスは、小胞体ストレス応答 (UPR) と呼ばれるストレスを緩和するための適応シグナルカスケードを引き起こす。

The failure of the UPR to resolve ER stress leads to pathological conditions such as β-cell dysfunction and death and T2D[117].
小胞体ストレスを解決するためのUPR応答が失敗すると、β細胞の機能不全と死亡、そして2型糖尿病のような病的な状態につながる。

The Western diet with increased glucose-, insulin/IGF-1- and leucine-mediated stimulation of mTORC1 may well explain the pathogenesis of T2D.
西洋的な食事はグルコースやインスリン/IGF-1シグナル、ロイシンが多く、mTORC1を過剰に刺激するが、それは2型糖尿病の原因を十分に説明すると思われる。

Increased and continued β-cell proliferation during the first decades of life may thus result in β-cell failure with age.
人生の最初の数十年間にβ細胞の増殖が増え続けることは、したがって、年とともにβ細胞が不足するという結果になるだろう。

Pro-proliferative signals of the Western diet and especially the persistently increasing levels of leucine may have a crucial impact on the functional capacity of the ER and thus β-cell homeostasis.
増殖シグナルの前段階である西洋的な食事、特にひたすら増加し続けるロイシン濃度は、小胞体の機能的な容量に重大な影響を与えるだろう。
したがって、それはβ細胞の恒常性にも影響するのである。
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by travelair4000ext | 2013-05-01 15:55 | 翻訳  

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