乳製品と糖尿病11

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3310004/#__sec20title

EXCESSIVE LEUCINE CONTENT OF INFANT FORMULA
乳児用ミルクの過剰なロイシン




The average protein content of human milk during the first 12 mo of lactation has been determined as 1.2 g protein/100 mL of whole milk[176].
ヒトが授乳する最初の十二ヶ月間、母乳に含まれる平均的なタンパク質の量は全乳100ミリリットルあたり1.2グラムと確かめられている。

※content of human milk: 176 (DARLING研究: Davis Area Research on Lactation, Infant Nutrition and Growth)。母乳100ミリリットルあたりの値を平均すると、タンパク質1.2グラム、脂質3.7グラム、乳糖7.4グラム、カロリーは70.4キロカロリーであった

This is the lowest protein concentration found in the milk of any mammalian species in which this value has been measured.
これは母乳を計測したどの哺乳類よりも低いタンパク質の濃度である。

In comparison, cow milk contains 3.4 g protein/100 mL.
比較して、牛乳は100ミリリットルあたり3.4グラムのタンパク質を含んでいる。

It has been shown that the protein content of mammalian milk of various species is inversely related to the rate of growth of the offspring[177].
哺乳類の母乳中のタンパク質の量は、子どもの成長の速度と逆相関することが示されている。

Human neonates receive the lowest protein content of milk among mammalian species and require 180 d to double their birth weight in comparison to rat or rabbit with milk protein concentrations of 9 and 10 g/100 mL, respectively, which already double their birth weight after 5 d.
ヒトの新生児が母乳から受け取るタンパク質の量は哺乳類の中で最も低く、生誕時の体重を二倍にするために180日を必要とする。
それに対して100ミリリットルあたり9グラムのラットと10グラムのウサギは、5日後にはすでに体重が二倍になる。

※neonate: 新生児。生まれてから28日までの子ども

It is known that premature infants fed formula containing a higher protein concentration gain weight faster than those fed formulas with a protein concentration closer to that of human milk[178,179].
タンパク質を多く含む調合乳を与えた未熟児は、ヒトの母乳に近いタンパク質の濃度を与えた未熟児よりも体重が増えるのが早いことが知られている。

※infant: 乳児。生まれてから1年未満の子ども

Remarkably, the leucine amount per g milk protein appears to be a mammalian species-independent constant in the range of 100 mg leucine/g milk protein for man, various primates and non-primate species, including cow[180].
驚くべきことに、乳タンパク質1グラムあたりのロイシンの量は、哺乳類の種類に関係なく一定のようである。
ヒト、様々な霊長類、牛などの霊長類以外でも、全て乳タンパク質1グラム中のロイシンは100ミリグラムの範囲内である。

Thus, the total amount of milk protein fed to infants is the critical determinant for the total leucine uptake, an important signal for mTORC1 activation.
したがって、乳児に与えられる乳タンパク質の合計が、mTORC1活性化にとって重要なシグナルであるロイシン総摂取量の重要な決定要素である。



It is thus of most serious concern that currently available cow milk-based infant formula, especially “hypoallergenic” whey-based products, provide more than double the amounts of leucine/feeding volume in comparison to the physiological leucine content of human breast milk.
したがって、最も重大な関心事は、現在流通している牛乳ベースの粉ミルクである。
特に「アレルギーを起こしにくい」と宣伝しているホエイをベースにした製品には、ヒトの母乳に含まれる生理的なロイシンの量と比較して二倍以上のロイシンが含まれている/つまり、二倍以上のロイシンが子どもに与えられることになる。

※hypoallergenic whey-based products: カゼイン (α-カゼインなど) にアレルギーを起こしている子どもは、ホエイ (β-ラクトグロブリンなど) にはアレルギーを起こしにくいかもしれない

Thus, artificial cow-milk-derived infant formula does not meet the physiological lower leucine signaling axis required for adequate mTORC1 regulation in the human newborn.
ヒトの新生児において適切にmTORC1が調節されるためには、ロイシンシグナルは低くしておくことが生理的に必要である。
しかし、牛乳由来の人工ミルクはそれを満たさない。

※axis: 発達や運動の主要な (軸となるような) 方向

These postnatal aberrations of leucine-mediated mTORC1 signaling explain the early protein hypothesis, which links high protein intake during the neonatal period to increased weight gain and childhood obesity.
生後のロイシン過剰によるmTORC1シグナルのこれらの異常が、「早期タンパク質仮説」の説明となる。
この仮説では、新生児期の高タンパク質摂取が体重増加の原因であり、幼児期の肥満につながっているとする。

In fact, a higher protein content of infant formula has been associated with a higher weight in 2 years old infants[181,182].
実際、乳児用ミルクのタンパク質の量が多いほど、2歳の時点で体重は増加するという関連が見られる。

The markedly higher protein and leucine intake with infant formula feeding, as compared with the protein supply in breastfed babies, may play the most important role in predisposing infants to an increased risk for obesity and T2D in later life[181,182].
母乳に比べて乳児用ミルクを与えることで著しく多くなるタンパク質とロイシンは、幼児が年をとってから肥満と2型糖尿病にかかりやすくするリスクの上昇に最も重要な役割を演じている可能性がある。

It has been recently confirmed that BCAAs, total IGF-1 as well as C-peptide, were significantly higher in infants fed a high-protein formula (2.9 and 4.4 g protein/100 kcal) in comparison to infants fed a low-protein formula (1.77 and 2.2 g protein/100 kcal) compared to breastfed infants[183].
最近の研究では、母乳児 (100キロカロリーあたり1.7グラムのタンパク質) と比較した場合、低タンパクのミルク (100キロカロリーあたり1.77グラムと2.2グラムのタンパク質) を与えた幼児ではわずかに、高タンパクのミルク (100キロカロリーあたり2.9グラムと4.4グラムのタンパク質) を与えた幼児では著しくBCAAとIGF-1が高くなり、そしてもちろんC-ペプチドも高くなることが確かめられている。

※protein/100 kcal: 上記の176 (DARLING研究) から計算すると、母乳100キロカロリーは142ミリリットルに相当し、含まれるタンパク質は約1.7グラムになる。
つまり、183の研究では「低タンパクのミルク」の下限、1.77グラムが通常の母乳の濃度に相当する

total IGF-1 as well as C-peptide: 血清中の平均総IGF-Iは、母乳群14.1に対して、低タンパク群で34.7、高タンパク群で48.4 (ng/mL)。尿中C-ペプチド:クレアチニン比は、母乳群57.0に対して、低タンパク群107.3、高タンパク群140.6 (ng/mg)

※C-peptide: C-ペプチド。インスリンの前駆体が切断される際に生成されるアミノ酸31残基のペプチド鎖。インスリンより半減期が長く、内因性インスリン分泌能の指標として用いられる

Median serum concentrations of leucine at 6 mo of age were lowest in breast-fed infants (106 μmol/L) compared to infants either fed low-protein formula (120 μmol/L) or high protein formula (165 μmol/L)[183].
生後6ヶ月時点での血清中ロイシンの平均濃度は、母乳育児の幼児が最も低く (1リットルあたり106マイクロモル)、低タンパクミルク群 (120マイクロモル)、高タンパクミルク群 (165マイクロモル)、どちらと比較しても低かった。

BCAAs: ロイシンは母乳群106に対して、低タンパク群120、高タンパク群165 (μmol/L)。イソロイシンは58に対して、64、85。バリンは172に対して、214、304。比率で見ると、低タンパク群と比較して高タンパク群では、ロイシン+37%、イソロイシン+32%、バリン+42%

Moreover, this study showed a correlation between total serum IGF-1 and growth (weight-for-length) at 6 mo of age.
さらに、この研究では、生後6ヶ月時点での血清中の総IGF-1と成長 (身長に対する体重の比) の間に相関が示された。

※length: 乳児の場合、同じ身長でもheightやstatueではなく、lengthを使うことが多い

※weight-for-length: 身長 (length) に対する (for) 体重 (weight)。0ヶ月から6ヶ月のIGF-1と成長の間に相関が見られる

Furthermore, strong evidence for cow milk-induced linear growth comes from observational and intervention studies in developing countries and many observational studies from well-nourished populations[184].
その上、牛乳は直線的な成長を促すことを示す強力なエビデンスが、発展途上国における観察研究と介入研究から、そして栄養状態が良好な集団による多数の観察研究から得られている。



In an effort to match the protein quality of human milk, cow-milk based infant formula currently contains almost 50% higher protein content (2.1-2.2 g/100 kcal) than human milk[185].
ヒトの母乳のタンパク質の品質に釣り合わせるため、牛乳ベースの乳児用ミルクは現在、母乳よりほぼ50パーセント高いタンパク質を含んでいる (100キロカロリーあたり2.1-2.2グラム)。

The appropriate supply of protein and amino acids and especially leucine appears to be a most critical factor in the postnatal period, a phase of metabolic programming.
適切なタンパク質とアミノ酸の供給、特にロイシンの適切な供給は、新生児期の 「代謝的プログラミング」 において、重要な要因であるように思われる。

※program: 計画、予定、または特定の結果を得るための一連の動作や命令を作成すること。プログラム。ギリシャ語の pro- 「前に」、gram 「書かれたもの」 から

Early postnatal underfeeding and overfeeding of mice resulted in adult metabolic abnormalities.
マウスの生後早い時期にエサを与えなかったり、与え過ぎたりすると、成長してからの代謝異常が引き起こされた。

In adult life, underfed mice, which were restricted to mouse milk in the early postnatal period exhibited impaired insulin secretion, whereas overfed mice, which received more milk protein and total leucine during the early postnatal period developed insulin resistance later in adult life[186].
生後早い時期にミルクを制限されたマウスは成長してからインスリン分泌不全を示した一方、過剰にミルクのタンパク質とロイシンの総量を与えられたマウスは、成長してしばらくしてから (生後12ヶ月) インスリン抵抗性を発症した。

※later in adult life: 生後12ヶ月 (at 12 months)。マウスの平均寿命は約2年強。overfedのマウスは12ヶ月時点で肥満になり、オスのマウスではHDL、総コレステロール、中性脂肪が高く、メスのマウスでは中性脂肪が高かった



Taken together, these data clearly allow the conclusion that increased dairy protein consumption during the neonatal period raised serum leucine and IGF-1 levels, which will have an impact on postnatal mTORC1 signaling.
合わせて考えると、乳製品のタンパク質の消費の増加が新生児期の血清中のロイシンとIGF-1の濃度を上昇させ、それが生後のmTORC1シグナルに影響を与えるであろうということがこれらのデータから明確に結論づけられる。

Milk signaling via insulin, IGF-1, GIP and leucine promotes general growth, β-cell growth, β-cell proliferation, increased insulin secretion, as well as S6K1-mediated early events in mesenchymal stem cell commitment increasing the number of adipocytes, thus programming critical early steps in adipogenesis[84-86].
インスリン、IGF-1、GIPとロイシンを媒介とするミルクシグナルは、全身の成長、β細胞の成長、β細胞の増殖、インスリン分泌の増加を促す。
そしてもちろんS6K1による間葉系幹細胞の拘束の早期発生も促進し、脂肪細胞の数を増加させ、したがって 「脂肪生成 (adipogenesis)」 において重要な早期のステップをプログラムする。

※stem cell: 幹細胞。無制限の自己複製能と分化した細胞をつくる能力を併せ持つ細胞

※mesenchymal stem cell: 間葉系幹細胞。間葉細胞の中にある幹細胞

※mesenchymal cell: 間葉細胞。間葉組織の基質を産生するとともに、線維芽細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、肝細胞などに分化する

※mesenchymal tissue, mesenchyme: 間葉組織 (間充組織、間充織)。間葉細胞と、その産物である細胞外物質より成る

※commitment: 拘束。特定の細胞への分化の決定

S6K1-mediated early events ... adipocytes: 「S6K1をノックアウトしたマウスの最近の実験では、マウスに高脂肪食を負荷した際の新規の脂肪細胞の誕生が、S6K1の欠損により阻害されたことが示されている」
「ロイシンは脂肪生成において根本的で機能的、かつ構造的な役割を果たしており、アミノ酸がmTORC1-S6K1経路を刺激する際の中心的な因子として機能している。この刺激因子は、胚性幹細胞から早期脂肪細胞前駆体への分化決定を促進し、PPARγとのクロストークを介して脂肪細胞の分化を刺激し、さらに脂肪細胞の脂質合成のための基質として機能する」

※Developmental Cell "S6K1 Plays a Critical Role in Early Adipocyte Differentiation"
では、S6K1-/-もしくはラパマイシンによる阻害により、高脂肪食を負荷しても脂肪細胞の 「低形成 (hypoplasia)」 と 「肥大 (hypertrophy)」 が起きている。
all-trans-retinoic acid (トレチノイン) のtreatmentによる効果 (FoxO発現) も見ている

The increased risk for obesity in leucine-rich formula fed infants[183] and the obesity-protective effects of physiological breastfeeding associated with lower leucine supply to the infant, may just reflect differences in leucine-stimulated mTORC1 activity, which when persistently over-activated promotes the pathogenesis of obesity, insulin resistance and T2D.
ロイシンの豊富な人工ミルクを与えられた乳児は肥満のリスクが増加し、ロイシンの少なさと関連した生理的な母乳は乳児を肥満から保護する。
これらはただ単に、ロイシンが刺激するmTORC1活性の違いを反映しているだけの可能性がある。
mTORC1は持続的かつ過剰に活性化される時、肥満とインスリン抵抗性、2型糖尿病の発症の原因を促進するのである。
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by travelair4000ext | 2013-05-08 13:28 | 翻訳  

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