社会的孤立と精神病06

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3759852/

Oxidative stress as a convergence point for genetic and environmental susceptibility to schizophrenia.
酸化ストレスは統合失調症にかかりやすい遺伝的要因と環境的要因の集合点である




Growing body of evidence suggests that oxidative stress plays a significant role in the pathogenesis of schizophrenia (see reviews, Behrens and Sejnowski, 2009; Do et al., 2009; Yao and Keshavan, 2011).
統合失調症の病理発生において、酸化ストレスが重要な役割を演じることを示唆する一連のエビデンスが増えつつある。

※oxidative stress plays a significant role: 麻酔域下濃度のNMDARアンタゴニストはIL-6/Nox2経路により酸化ストレスを生じ、ニューロンでシステインを細胞外から取りこむ輸送体のEAAC1 (excitatory amino acid carrier 1) を不活性化して、細胞内のGSH濃度を低下させる (Behrens and Sejnowski, 2009)

※in the pathogenesis of schizophrenia: 酸化ストレスはホスホリパーゼA2を活性化して多価不飽和脂肪酸 (PUFA) を分解して細胞膜のアラキドン酸レベルを変化させ、神経の伝達、成長、調節に影響する。さらに、IL-2やIL-6などのいくつかの向炎症性サイトカインに影響して自己免疫の異常 (autoimmune dysfunction) を誘発する。
間接的な証拠として、統合失調症では関節リウマチや、ナイアシンによるホットフラッシュ (niacin-induced skin flushing) が起こりにくい (Yao and Keshavan, 2011)

※niacin-induced skin flushing: ナイアシンは肌にいるマクロファージのGタンパク質共役受容体 (HM74a/GPR109a) と結合してホスホリパーゼA2を刺激し、細胞膜からアラキドン酸 (AA) を切り出す。AAは血管拡張性のプロスタグランジン (PGD2) に変換される

Oxidative stress occurs when ROS or reactive nitrogen species (RNS) are over-produced or antioxidant defense mechanisms fail to counterbalance endogenouse ROS/RNS generated from normal oxidative metabolism or from pro-oxidant environmental exposure.
酸化ストレスが起きるのは、活性酸素種 (ROS) か活性窒素種 (RNS) が過剰に産生されたとき、または酸化に対して防御するメカニズムがそれらと釣り合いを取ることに失敗したときである。
生体内に由来するROSやRNSは正常な酸化的代謝から産生されるが、酸化を促進する環境へ曝露することからも作られる。

※reactive oxygen species (ROS): 活性酸素種。不対電子をもつために反応性が高い分子種。ミトコンドリアの電子伝達系で生成されるスーパーオキシド (O2・⁻)、SODによりスーパーオキシドが不均化されて生じる過酸化水素 (H2O2) 、フェントン反応により過酸化水素から生成される水酸化ラジカル (OH・) など。ドーパミンが代謝される過程でもO2・⁻とH2O2が発生する

※reactive nitrogen species (RNS): 活性窒素種。窒素原子を含む反応性の高い分子種。NOSによってアルギニンから生成される一酸化窒素 (NO・) 、一酸化窒素とスーパーオキシドから作られるペルオキソ亜硝酸 (ONOO⁻) など

※oxidation: 酸化。狭い意味では「酸素と結合する反応」か「水素を除去する反応」。広い意味では「化合物から電子が奪われる反応」を指す

Excessive ROS or RNS can lead to DNA damage and membrane damage due to lipid peroxidation and protein dysfunction.
過剰なROSまたはRNSは、脂質の過酸化とタンパク質の機能不全によりDNAと細胞膜のダメージにつながり得る。

Mammalian antioxidant defense system include ROS detoxifying enzymes such as superoxide dismutases (SOD), catalase (CAT) and glutathione peroxidase (Gpx), and nonenzymatic antioxidant components such as albumin, uric acid, bilirubin, glutathione (GSH), ascorbic acid (vitamin C) and a-tocopherol (vitamin E).
ほ乳類の酸化ストレスに対する防御システムには、ROSの解毒酵素として例えばスーパーオキシドディスムターゼ (SOD)、カタラーゼ (CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ (Gpx) などがあり、酵素以外の要素はアルブミン、尿酸、ビリルビン、グルタチオン (GSH)、アスコルビン酸 (ビタミンC)、α-トコフェロール (ビタミンE) が含まれる。

※catalase (CAT): カタラーゼ。過酸化水素を水と酸素に分解する反応を触媒する。三種類ある内の通常はヘムを補欠分子族とするカタラーゼを指し、四量体でそれぞれヘム1分子とNADPHをもつ

※albumin: アルブミン。血清アルブミンは脂肪酸輸送や血液浸透圧を調節し、ホルモンやビリルビンとも結合する。抗酸化作用がある

※uric acid: 尿酸。蛋白質やプリン塩基などの窒素化合物が代謝された結果生じる有害なアンモニアは、尿酸に変換されて排出される。抗酸化物質

※bilirubin: ビリルビン。赤血球のヘムがヘムオキシゲナーゼにより分解された結果生じるビリベルジンが、さらに酵素により還元されたもの。抗酸化物質

※ascorbic acid (vitamin C): アスコルビン酸。強い還元作用がある抗酸化物質。コラーゲンの生合成にも関与し、欠乏すると壊血病になる。anti + scorbutic 「壊血病の」

※a-tocopherol (vitamin E): アルファ-トコフェロール。リン脂質の不飽和脂肪酸の過酸化を防ぐ抗酸化物質

Reduced levels of ROS detoxifying enzymes and antioxidants have been reported in schizophrenia (Suboticanec et al., 1990; Reddy et al., 1991; McCreadie et al., 1995; Mukerjee et al., 1996; Yao et al., 1998, 2000; Do et al., 2000; Ranjekar et al., 2003; Reddy et al., 2003; Yao et al., 2006; Dadheech et al., 2008; Raffa et al., 2009; Gawryluk et al., 2011; Coughlin et al., 2013), in addition to increased levels of lipid peroxides in blood (Zhang et al., 2006; Al-Chalabi et al., 2009; Padurariu et al., 2010), platelets (Dietrich-Muszalska et al., 2005), plasma (Mahadik et al., 1998) and urine (Dietrich-Muszalska and Olas, 2009a).
ROSを解毒する酵素と抗酸化物質の濃度の減少が統合失調症では報告されている。
血液、血小板、血漿、尿に含まれる過酸化脂質も増加する。

※reduced levels of ROS detoxifying enzymes and antioxidants: 統合失調症の患者はコントロール群と比べて還元型GSH、SOD、CATレベルが著しく低く、そして未治療の患者では治療中の患者と比べてSODとCATが著しく低かった。加えて総GSHと還元型GSHは、患者のCGI重症度スコアと逆相関していた (Raffa et al., 2009)。
発症して数年以内の患者はCSFでの可溶性SODが低下している (Coughlin et al., 2013)

※lipid peroxide: 過酸化脂質。ヒドロペルオキシド基 (OOH) を含む脂質。多価不飽和脂肪酸の二重結合は、酸素と反応してOOHを生じる (自動酸化)。hydro「水素」 + per「すっかり、完全に、過度の」 + oxide 「酸化物」

Increased protein modification has been also demonstrated in plasma (Dietrich-Muszalska et al., 2009), platelets (Dietrich-Muszalska and Olas, 2009b) and postmortem brains (Wang et al., 2009).
血漿と血小板、そして検死された脳では、タンパク質の修飾も増加していることが明らかにされている。

※modification: 修飾。分子の化学的・構造的な改変






Genetic origin of oxidative stress
酸化ストレスの遺伝的な原因


Interestingly, a number of genes involved in antioxidant defense have been linked to susceptibility for schizophrenia.
興味深いことに、酸化ストレスへの防御に関与するかなりの遺伝子が、統合失調症への感受性につながっている。

These include MnSOD (Akyol et al., 2005), glutathione S-transferases (Saadat et al., 2007; Nafissi et al., 2011), and a subunit of the key GSH-synthesizing enzyme GCLM (Tosic et al., 2006; Gysin et al., 2007, 2011).
これらの遺伝子には、マンガンオキシドディスムターゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、そしてグルタチオンを合成する重要な酵素のサブユニットであるGCLMが含まれる。

A mitochondrial DNA sequence variation affecting a subunit of NADPH-ubiquinone reductase (complex I), a component of the electron transport chain responsible for generating superoxide, has also been associated with schizophrenic patients and with increased superoxide levels in postmortem brain samples (Marchbanks et al., 2003).
ミトコンドリアDNAの配列の変異は、NADPH-ユビキノン還元酵素 (複合体I) のサブユニットに影響する。複合体Iは電子伝達系の一部であり、スーパーオキシドを生成する原因である。
この変異も統合失調症の患者と関連し、検死の脳サンプルでのスーパーオキシド濃度の増大とも関連していた。

※complex I: 複合体I。NADH-ユビキノン還元酵素、NADH脱水素酵素とも。ミトコンドリアの内膜で電子伝達系を構成する。NADHを電子供与体として複合体Iにより還元された還元型ユビキノンの電子は、複合体IIIによってシトクロムcに渡される。
複合体IサブユニットND4の特定の変異は、男性患者では47パーセントだったのに対してコントロール群では18パーセント、女性では36パーセントと18パーセントだった (Marchbanks et al., 2003)

Furthermore, abnormal proteins encoded by schizophrenia susceptibility genes (PRODH, DISC1, DAOA, NRG1, G72) cause oxidative stress and/or hypersensitivity to oxidative stress (Goldshmit et al., 2001; Krishnan et al., 2008; Drews et al., 2012) or mitochondrial dysfunction (Park et al., 2010).
さらに、統合失調症の感受性遺伝子 (PRODH、DISC1、DAOA、NRG1、G72) によってコードされる異常なタンパク質は、酸化ストレスか、酸化ストレスへの過剰な反応性、そのどちらかもしくは両方を引き起こすか、またはミトコンドリアの機能不全を引き起こす。

PRODH: プロリンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子で、ミトコンドリアのプロリン代謝に必要。プロリンは1-ピロリン-5-カルボン酸を経てグルタミン酸に変換され、α-ケトグルタル酸からオキサロ酢酸を経由して糖新生に入る。
PRODHを過剰発現させると細胞内のプロリン濃度が低下して細胞生存が低下し、逆にプロリンを生合成する酵素の発現 (1-pyrroline-5-carboxylate reductase (P5CR); 1-ピロリン-5-カルボン酸レダクターゼ) を高めるとROSが低下して細胞生存が上昇する。ほ乳類の種々の細胞はH2O2への曝露に応答してプロリン生合成を高める。プロリンが細胞内のグルタチオンの量 (intracellular glutathione pool) を維持するためにはピロリジン環のアミンが必要 (Krishnan et al., 2008)

※DISC1: DISC1は一部分が直接ミトコンドリア内膜のミトフィリンと相互作用して、複合体Iの活性とATPの産生、ミトコンドリアのカルシウム動態などの機能を維持する。DISC1とミトフィリンの障害はミトコンドリアのモノアミンオキシダーゼ (MAO) Aの活性を低下させた。DISC1の障害はミトフィリンのユビキチン化を引き起こす (Park et al., 2010)

DAOA (D-amino acid oxidase activator): D-アミノ酸オキシダーゼアクティベーター。G72としても知られる。
D-アミノ酸の一つであるD-セリンはNMDA受容体を活性化するが、DAOはD-セリンを酸化的脱アミノで分解し、DAOAはDAOを活性化する。
G72を過剰発現するトランスジェニックマウスは統合失調症様の異常行動を示し、複合体Iの活性が低下してROSの産生は増加し、そしてシナプスの短期可塑性も障害された (Drews et al., 2012)

※NRG1: ニューレグリン (NRG) はポリペプチドの神経成長因子で、ErbB4/HER4に結合する。ニューレグリンはPI3K経路を介してH2O2による細胞死を抑制し、PI3Kの下流にあるAktをリン酸化して活性化する。H2O2によるROSの上昇もニューレグリンによって阻止される (Goldshmit et al., 2001)

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by travelair4000ext | 2013-10-09 12:17 | 翻訳  

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