社会的孤立と精神病21

まとめです。




・霊長類では、GABA作動性介在ニューロンの25パーセントがパルブアルブミン (PV) 陽性介在ニューロン (PVI)。PVIにはカゴ細胞とシャンデリア細胞が含まれる。パルブアルブミンはカルシウムを結合する緩衝装置 (buffer) として働く

・PVIの86パーセントが高速発火 (FS) PVI。FS PVIはγ波を生成するとともにGABAにより錐体ニューロンを制御して、認知機能 (注意、知覚、作業記憶) に寄与する

・γ波の生成には高いエネルギーが必要。FS PVIにはミトコンドリア/電子伝達系複合体が多く、複合体の多さは酸化ストレスの原因になる。酸化ストレスを生じる/酸化ストレスに過敏な遺伝的要因が、統合失調症に関与している可能性がある

・FS PVIには転写因子のPPARγ活性化補助因子1-α (PGC-1α) も多い。実際、PGC-1αタンパク質はGABA作動性ニューロンで最も多く発現し、皮質のPVIでは特に濃度が高い。PGC-1αはミトコンドリアの生合成、PVと抗酸化ストレス酵素の転写を促進する

・PGC-1αはAMPK/SIRT1やcAMP/CREB/CaMKIVによって誘導されるが、CREBが結合するPGC-1αプロモーターのcAMP応答配列 (cAMP response element; CRE) にはCpGアイランドが隣接しているため、CpGメチル化によって発現が阻害される。CpGメチル化には社会的孤立ストレスなどの環境的な要因による糖質コルチコイドが関与している可能性がある

したがって、

・環境的要因によってPGC-1αの発現が低下すると、酸化ストレスを処理する酵素が減少する。ただでさえ活性酸素が発生しやすく、そして成長が遅いFS PVIは、遺伝的に酸化ストレスが生じやすい人ではより脆弱であり、若い間の環境ストレスによるPGC-1αの低下の影響を受けやすい

・FS PVIはGABAとγ波で錐体ニューロンを制御していると考えられ、環境と遺伝によるFS PVIの機能低下は認知機能の低下につながる

という仮説を今回の論文で提示しているようです。



ところで、転写因子のPGC-1αは、前回取り上げた同じく転写因子のFoxO1といくつかの点で似ていたり、正反対の役割を担っていたりするようです。

・PGC-1αは絶食/寒冷/運動によるSIRT1/AMPK、cAMP/CREB、Ca2+/CaMKIVで誘導され、FoxOは絶食によるインスリン/成長因子の欠乏、またはビタミンA誘導体のレチノイン酸で誘導される

・PGC-1αはミトコンドリアを補助、FoxOはミトコンドリアを抑制

・PGC-1αとFoxOはどちらも活性酸素で誘導され、活性酸素を抑制

・PGC-1αとFoxOはどちらもエネルギー需要の高い組織に発現

・PGC-1αとFoxOはお互いに阻害する

最後の「お互いに阻害」ですが、PGC-1α─┤FoxOについては今回の論文の途中で出てきました。
FoxO─┤PGC-1αについては、下の図と以前のFoxOのレビューを読めば理解できると思います。

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元の記事にリンクを貼っておくので、興味のある方は読んでみてください。短いのですぐに読めると思います。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20023377
"Foxo1 in hepatic lipid metabolism."

上の図をちょっと眺めれば、インスリンの欠乏が健康を害することが簡単に理解できると思います。
それでは。
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by travelair4000ext | 2013-11-24 20:49 | 翻訳  

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