自己免疫疾患の原因10

The histone modification patterns that have been reported in SLE are complex.
SLEで報告されているヒストン修飾のパターンは複雑だ。




There is evidence that tissue-specific acetylation in some regions is associated with disease activity, whereas histone acetylation in other regions seems to have protective effects [47, 48, 49].
いくつかの領域において組織特異的なアセチル化が疾患活動性と関連するというエビデンスがある一方で、別の領域におけるヒストンのアセチル化は保護的な効果があるようだ。[47, 48, 49]

※[47] では、10週齢のMRL/lprループスマウスの脾臓細胞に脱アセチル化酵素 (HDAC) 阻害剤のTSAとSAHAを18時間適用した後、6時間から18時間LPSとIFN-γで刺激すると、IL-6、IL-10、IL-12p40/p35、IFN-γのmRNAとタンパク質がvehicle群よりも低下した。
HDACはクラスIからクラスIVまで存在する。
HDAC阻害剤のトリコスタチンA (TSA) はクラスI (HDAC1、2、3) とクラスII (HDAC4、6、10) を阻害し、ボリノスタット (SAHA) はクラスI (HDAC1、3) とクラスII (HDAC6) を阻害する

※[48] には、HDAC阻害剤のTSAによりT細胞のTCRζ鎖の発現が低下し、そのホモログであるFcεRIγ鎖の発現が上昇、それと同時にIL-2遺伝子の発現は低下した、とある。FcεRIγは今はFcRγと呼ぶようだ

※[49] は、疾患が治まっているSLE患者の単球での研究。
通常、TNFαの転写開始位置を挟む (bracket) 位置でのヒストンH4のアセチル化は低く、上流へ行くほどアセチル化が上昇する。
SLE患者では、単球のヒストンH4のアセチル化の度合いが上流に行くほど健常者よりも著しく高くなった。H4アセチル化の上昇はTNF-α発現の増加と一致し、赤血球沈降速度 (ESR) 、細胞毒の免疫抑制剤の使用と関連した

※erythrocyte sedimentation rate (ESR): 赤血球沈降速度。赤血球の表面は陰性に荷電しているため、血漿中に陽性に荷電したグロブリンや凝固因子フィブリノゲンが増加すると凝集が亢進して沈降速度が上昇する



Experimental data is available for the TNF-α promoter in SLE, and histone hyperacetylation has been shown to be associated with increased monocyte maturation and TNF-α expression in SLE patients [48].
SLEにおけるTNF-αプロモーターの変化を示すのに役立つ実験データがあり、そしてSLEの患者ではヒストンの過剰なアセチル化が単球成熟の増加、ならびにTNF-α発現の増加と関連することが観察されている。

However, it remains unclear if this represents a pathogenic step, or rather an effect of the pathophysiological changes in SLE.
しかし、これが病気を引き起こす段階を表しているのか、それともむしろSLEにおける病態生理学的な変化の影響を表すのかは不明のままである。



Treatment of T lymphocytes from healthy donors with HDAC inhibitors resulted in decreased CD3ζ chain expression, resembling signaling abnormalities observed in patients with SLE [48] which further supports the role of histone hyperacetylation in SLE.
健康なドナーからのTリンパ球をHDAC阻害剤で処理すると、CD3ゼータ鎖 (CD3ζ) の発現が減少する結果になった。
これはSLE患者で観察されるシグナル伝達の異常に類似しており [48]、ヒストンの過剰なアセチル化がSLEで一定の役割を果たすことをさらに支持するものだ。

※CD3ζ chain: CD3ゼータ鎖。Tリンパ球のTCRと会合しているITAMモチーフを含む分子






One example of a disease-related HDAC-regulated locus in SLE is IL2.
SLEで疾患に関連してHDACに調節される遺伝子座の一例はIL2だ。

The cAMP response element (CRE) modulator α (CREMα) is a ubiquitously expressed transcription factor belonging to the CREB family of transcription factors.
cAMP応答配列 (CRE) 調節因子α (CREMα) は様々な細胞で発現する転写因子で、転写因子のCREBファミリーに属している。

CREM is overexpressed in SLE T cells [50] and is responsible for the termination of IL-2 expression in T lymphocytes.[50]
CREMはSLEのT細胞で過剰に発現しており、Tリンパ球でIL-2の発現が枯渇する原因になる。[50]

※CREM is overexpressed: T細胞によるIL-2の産生には、補助刺激分子のCD28が重要。
CD28の刺激は、p300/CBP分子がfosプロモーターへトランスロケーションするのを促進する。p300/CBPはfosプロモーターのヒストンH4アセチル化を促進し、RNAポリメラーゼIIの結合を促進する。FosはJunと会合して転写因子AP-1を形成し、NFATと共にIL-2産生を誘導して、T細胞をアナジーから救う (AP-1が形成されないとNFATはT細胞をアナジーに至らせる)。
さらに、CD28の刺激はp38とCAMKIV (カルシウム・カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ4) を介してpCREB (リン酸化CREB) とCBPがIL2プロモーターへ結合するのを促進するが、SLEではpCREBと競合するCREMが増加している。
加えて、SLEではPP2A (プロテインフォスファターゼ2A) のmRNA/タンパク質/タンパク質活性が増大しているため、PP2Aの基質であるpCREBは脱リン酸化される。脱リン酸化の結果として、pCREBのfosプロモーターとIL2プロモーターへの結合は減少し、IL-2の産生が障害される [50]

※TSS (transcription start site): 転写開始箇所



CREMα was shown to recruit HDAC to CRE sites in the IL2 promoter, causing histone de-acetylation and contributing to the silencing of IL2 in SLE T cells [51].
CREMαはそのHドメインにより、HDAC1をIL2プロモーターとfosプロモーターのCRE箇所 (TGACGTCA) に呼び寄せることが示された。
このHDAC1のリクルートはヒストンの脱アセチル化を引き起こし、SLEのT細胞でIL2をサイレンシングする一因である。[51]

※CREMα: CREMαの発現は本来、造血幹細胞に由来するT細胞・B細胞・単球・マクロファージを、PMA・イオノマイシン・LPS等で適切に刺激した後で見られる [51]
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by travelair4000ext | 2013-12-18 17:25 | 翻訳  

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