自己免疫疾患の原因13

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Epigenetic mechanisms in autoimmune diseases
自己免疫疾患におけるエピジェネティックなメカニズム





In rheumatoid arthritis, various disease-specific epigenetic patterns have been reported.
関節リウマチでは、様々な疾患特有のエピジェネティックなパターンが報告されている。

Rheumatoid arthritis synovial fibroblasts (RASF) play a central role in disease onset and progression [61].
関節リウマチ滑膜線維芽細胞 (RASF) は疾患の発症と進行において中心的な役割を演じる。

Decreased global (RASF) and local (LINE-1 promoter) DNA-metylation has been reported [61–63].
全体 (RASF) と局所 (LINE-1プロモーター) でのDNAメチル化の低下が報告されている。

Demethylated CpG elements within the IL6 promoter of monocytes are associated with monocyte activation and inflammation [61, 64].
単球のIL6プロモーター内のCpG配列の脱メチル化は、単球の活性化ならびに炎症と関連する。

In accordance with these finding, demethylation of normal fibroblasts with 5-acazytidine results in RA-like phenotypes [61].
5-アザシチジンで正常な線維芽細胞を脱メチル化するとRA様の表現型という結果になるのも、これらの知見と一致している。



Interestingly, due to increased DNA methylation, death-receptor-3 (DR-3) is downregulated in rheumatoid arthritis patients’ monocytes.
興味深いことに、関節リウマチ患者の単球ではDNAメチル化が増加し、それによりデスレセプター3 (DR-3) の発現が抑制的に調節されている。

This results in resistance to apoptosis and may account for extended pro-inflammatory responses [13, 65].
この抑制の結果として細胞はアポトーシスに対して抵抗性になり、これが炎症性の応答が拡大する原因だろう。

※[65] にDR-3についての記述はない。[13] と、[13] が参照する [95] に記述がある。
DR-3プロモーターの近くには、GATAとOct-1、そして二つのSp1結合箇所があり、DR-3プロモーター領域にはCpGモチーフが多い

※death-receptor-3 (DR-3): デスレセプター3。腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー (TNFRSF) のメンバー25。DR-3のリガンドは腫瘍壊死因子スーパーファミリー (TNFSF) のメンバー15
他の受容体とリガンドの組み合わせとして、
TNFRSF1A / TNFRSF1BTNFSF2 (TNF-alpha)、
TNFRSF4 (OX40) とTNFSF4 (OX40L)、
TNFRSF5 (CD40) とTNFSF5 (CD40 ligand)、
TNFRSF6 (FAS) とTNFSF6 (FAS ligand) などがある



Furthermore, the balance between histone acetylation and deacetylation through HDACs is disrupted in rheumatoid arthritis, resulting in a hyperacetylated genome [61, 66].
さらに、HDACによるヒストンのアセチル化と脱アセチル化との間のバランスが、関節リウマチでは破綻している。
その結果ゲノムは過剰にアセチル化する。

※[66] は[65] の間違いだろう。
[65] によれば、関節リウマチ患者の滑膜組織では変形性関節炎または健常者と比較してヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) の活性が低く、HDACのヒストンアセチル化酵素に対する比率も低かった

HDAC-inhibitors on the other hand improve symptoms in murine rheumatoid arthritis models and reduce the expression of vascular endothelial growth factor in-vivo.
一方、HDAC阻害剤はマウスの関節リウマチモデルの症状を改善し、in vivoで血管内皮成長因子 (VEGF) の発現を低下させる。

This results in reduced angiogenesis in synovial tissue in collagen-antibody induced arthritis.
この結果、抗コラーゲン抗体による関節炎を起こした滑膜組織では (HDAC阻害剤により) 血管新生が減少する。






Scleroderma is characterized by tissue and organ fibrosis.
強皮症の特徴は、組織と臓器での繊維の過剰な増殖だ。

Cultured scleroderma fibroblasts exhibit disease-specific cytokine-profiles, including over-expression of TNF-α.
培養された強皮症の線維芽細胞は、TNF-αの過剰発現を初めとする疾患特有のサイトカインの特徴を示す。

Fibroblasts maintain a profibrotic phenotype when transferred to in-vitro settings.
線維芽細胞はin vitroの環境に移されても、繊維の増殖が進行する表現型を維持する。

An involvement of aberrant DNA methylation and histone acetylation has been suggested [4, 13], but direct evidence remains to be provided.
異常なDNAメチル化とヒストンアセチル化の関与が示唆されているが、直接的なエビデンスは示されないままである。

Co-culture of fibroblasts with HDAC-inhibitors results in increased expression of the transcription factor FLI1, resulting in increased collagen-production in fibroblasts [67].
線維芽細胞をHDAC阻害剤と共に培養すると、コラーゲン産生を抑制する転写因子FLI1の発現が増加して、線維芽細胞でコラーゲンの産生が低下する結果になる。

※collagen: コラーゲン。多数のコラーゲン分子が会合して三重らせん構造を取ることで、コラーゲン繊維が形成される

※[67] は[66] の間違いだろう (67はMSの研究)。
[66] によれば、強皮症の線維芽細胞と肌の生検試料ではコラーゲンの合成を抑制するFLI1遺伝子の発現が低下し (コントロール群と比較して0.27倍)、プロモーター領域のCpGは著しくメチル化していた






In type 1 diabetes, susceptibility genes have been reported, but additional factors are involved in the pathogenesis [13, 28].
1型糖尿病 (T1D) では疾患感受性の遺伝子が報告されているが、それ以外の追加要因が病理発生に関与する。

Epigenetic analysis of concordant twins demonstrated significantly increased DNA methylation, when compared to healthy individuals.
両方がT1Dを発症した双子のエピジェネティック分析では、健康な人たちと比較してDNAメチル化が著しく増加していることが明らかになった。

Epigenetic variation may result in impaired homocysteine metabolism and subsequent tissue damage, impaired lymphocyte function and pancreatic islet-cell repair mechanisms [13].
エピジェネティックな変異の結果、ホモシステインの代謝が障害され、その後の組織の損傷とリンパ細胞の機能障害、そして膵島細胞の修復メカニズムにつながるのだろう。

※repair mechanism: 修復メカニズム。[13] にはこう書かれている。
初期の膵臓へのダメージの存在が自己免疫による攻撃を開始させ、細胞増殖のような修復メカニズムの活性化につながり、最終的にエピゲノムの完全性に影響する可能性がある。エピジェネティックな修飾は膵島細胞においても重要であり、それは修復メカニズムの影響を通してである

※impaired homocysteine metabolism: [13] によれば、ホモシステインは、メチオニンか、システインに代謝される。
グルコース/インスリンは、ホモシステインからメチオニンへの再メチル化を増加させ、その結果SAM、つまりメチル基の供給源を増やす。
それと同時にシステインは減少し、その結果タウリンも減少し、膵島の増殖は低下、アポトーシスが増加して、インスリン炎 (insulitis) を起こす。これが1型糖尿病の発症に寄与するようだ。
実際、NOD (non-obese diabetic) マウスの妊娠中から離乳前までタウリンを補充すると、その子どものインスリン炎は減少し、膵島の重量は増加してアポトーシスは減少し、糖尿病の発症も遅くなった
同様に、妊娠中にタンパク質が不足したラット (通常群のタンパク質20パーセントに対して不足群は8パーセント) の子どもはβ細胞が減少するが、タウリンの補充でβ細胞の量とその周囲の血管の密度は回復した

※[13] の参照先 [132] によれば、PTPN22遺伝子の1858Tアレル (Arg620Trp) を持つフィンランド人の子ども (Finnish diabetes prediction and prevention cohort; DIPP) は、出産後6ヶ月以内に牛乳ベースの人工乳 (cow's milk based formula) を飲んでいるとT1Dの発症と関連し、自己抗体 (ICA、IAA、IA-2A) の出現と相関した。
早期の牛乳の曝露によるエンテロウイルス感染が自己免疫の出現と関連し、牛乳とエンテロウイルス感染の組み合わせ (combined) はT1Dの自己抗体の発生に影響するという報告も同研究グループから
チロシンフォスファターゼPTPN22はC1858T (Arg620Trp) の変異によりC-サークチロシンキナーゼ (Csk) に結合できなくなり、LckやZap70の脱リン酸化が低下して自己免疫疾患 (T1D、RA、SLE) の原因になる

※[13] には、「食物とエピジェネティックなメカニズムの関連は、胚発生から子宮内、そして生まれる前後の期間で重要であることが動物モデルで証明されている」とある。その参照先の [131] の内容は次のようなもの。
viable yellow アグーチマウス (生育可能な黄色アグーチマウス; Avy) の母親に食物でメチル基の供与体 (葉酸、ビタミンB12、コリン、ベタイン) を与えると、子どもではレトロトランスポゾンIAPのCpGメチル化が増加して、下流のアグーチ遺伝子の発現が低下する。
アグーチ遺伝子産物はパラクリンにシグナル伝達する分子で、正常な発現の状態では毛包メラノサイトはユーメラニン (黒色) からフェオメラニン (赤褐色) 産生にスイッチする。アグーチ遺伝子が正常なAアレルでは毛色が茶色になり、アグーチ遺伝子が機能喪失変異を起こしたaアレルでは黒になる。
IAPのCpGメチル化が低下すると「隠されたプロモーター (cryptic promoter) からの異所的な異常発現 (ectopic expression) 」が増加し、アグーチ遺伝子の過剰発現により体毛は茶色から黄色になる。
このCpGメチル化は、尾、肝臓、腎臓、脳で起きていた








In multiple sclerosis patients, a 30% reduction of DNA methylation in white matter lesions has been reported.
多発性硬化症の患者では、白質の病変部でのDNAメチル化が30パーセント低下していることが報告されている。

※white matter: 白質。有髄神経の集まり。灰白質は、神経細胞体が多く集まっている領域

Furthermore, hypomethylation of the promoter region of the peptidyl-arginine-deaminase II (PAD2) gene has been demonstrated [13].
さらに、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ2 (PAD2) 遺伝子のプロモーター領域ではCpGメチル化の低下が証明されている。[13] [17]

PAD2 is involved in the citrullination of myelin-basic-protein (MBP) and overexpressed in multiple sclerosis patients.
PAD2はミエリン塩基性タンパク質 (MBP) のシトルリン化に関与し、多発性硬化症の患者で過剰に発現する。

※peptidyl-arginine-deaminase II (PAD2): ペプチジルアルギニンデイミナーゼ2。アルギニン残基をシトルリンに変える反応を触媒する

※myelin-basic-protein (MBP): ミエリン塩基性タンパク質。ミエリン (髄鞘) の構造を維持する



Citrullination of MBP may play an important role in protein auto-cleavage [13].
MBPのシトルリン化は、タンパク質の自己分解で重要な役割を演じる可能性がある。

Thus, proteolytic digestion and myelin instability may result in enhanced T lymphocyte responses and inflammation [13].
そうして、タンパク質分解による消化と、ミエリンの不安定化は、Tリンパ細胞の応答と炎症の促進という結果につながるかもしれない。

The clinical improvement of mice that were induced to develop multiple sclerosis in response to HDAC-inhibitor treatment suggests an involvement of histone modifications [68].
多発性硬化症を発症させたマウスは、HDAC阻害剤の投与に応じて臨床的に改善した。
これはヒストン修飾の関与を示唆する。



Still, findings are somewhat preliminary and genome-wide studies on epigenetic mechanisms, including DNA methylation and histone modifications are in progress.
なお、これらの知見はいくらか予備的なものであり、DNAメチル化とヒストン修飾を含めたエピジェネティックなメカニズムについてのゲノム全体の研究が進行中である。
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by travelair4000ext | 2013-12-25 18:32 | 翻訳  

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