ゾヌリン系27
http://physrev.physiology.org/content/91/1/151.long
要旨を簡単にまとめておきます。
要旨
ヒトの血液中にはハプトグロビンというタンパク質があり、その役割は血中のヘモグロビンを回収することである。
ハプトグロビンには遺伝的に1と2の2種類があるが、研究により、細胞の中で作られたばかりのハプトグロビン2の前駆体にだけ別の機能があることが判明した。
その機能とは、血管や小腸の細胞膜を結合させているタイトジャンクションからZO-1を遊離させ構造を可逆的に破壊し、巨大分子を通過させるというものである。
研究者らは、この前駆体にゾヌリンと名付けた。
ゾヌリンは、コレラ菌が持っている毒素の一つ(Zot)と同じ構造である。
ゾヌリンは、小麦のグリアジンや、細菌による刺激で、腸や血中に放出される。
人種にもよるが、約7割のヒトがゾヌリンを最低1つは持っている。ゾヌリンを2つ持っているヒトも3割は存在する。
※岡山大学病院の旧ホームページによれば、(おそらく日本人の) ハプトグロビンの血清型の頻度は1-1が5.7%、2-1は49.3%、2-2は33.3%、つまり8割以上がゾヌリンを持っていることになります。
ゾヌリンの構造と機能
ハプトグロビンはα鎖とβ鎖から構成されている。
ハプトグロビン前駆体はα鎖とβ鎖がまだ切断されていない1本鎖の状態である(Fig.1参照)。
α鎖には2種類あり、ゾヌリンはα鎖がα2である。
ハプトグロビンは、補体関連タンパク(マンノース結合レクチン関連セリンプロテアーゼ,MASP)から進化した。
他の補体関連タンパク質(MASP)ファミリーには、プラスミノゲン関連成長因子(上皮成長因子EGF、肝細胞成長因子HGF)があり、そのレセプター(EGFRなど)と相互作用する可能性がある。
α鎖は、補体制御タンパク質(CPP)を含む。
β鎖は、表皮成長因子様モチーフを含むキモトリプシン様セリンプロテアーゼ(SPドメイン)に関連する。アミノ酸置換によりセリンプロテアーゼ活性は失っている。
ゾヌリンが作用するメカニズム
(1)ゾヌリンβ鎖がEGFRを直接に活性化
(2a)ゾヌリンα鎖 -> PAR2 -> Src(EGFR)
(2b)ゾヌリンα鎖 -> PAR2 -> MMPs/ADAMS -> Pro-HP-EGF -> EGFR
コレラの毒素(Zot)が作用するメカニズムは(2)と同様である(Fig.6、Fig14参照)
ゾヌリン放出の原因
腸上皮のCXCR3に結合してゾヌリンを放出させるα-グリアジンの配列(Fig.13参照)
QVLQQSTYQLLQELCCQHLW
または
QQQQQQQQQQQQILQQILQQ
※Q(グルタミン)、V(バリン)、L(ロイシン)、S(セリン)、T(トレオニン)、Y(チロシン)、E(グルタミン酸)、C(システイン)、H(ヒスチジン)、W(トリプトファン)、I(イソロイシン)
ゾヌリンの関与する疾患(Fig.11参照)
「アレルギー」
喘息
「自己免疫疾患」
強直性脊椎炎
セリアック病(I)(II)(III)
炎症性腸疾患(クローン氏病)
リウマチ性関節炎
全身性エリテマトーデス
1型糖尿病
「癌」
脳癌(グリオーマ、神経膠腫)
乳癌
肺腺癌
卵巣癌
膵臓癌
「神経系疾患」
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
多発性硬化症
統合失調症
要旨を簡単にまとめておきます。
要旨
ヒトの血液中にはハプトグロビンというタンパク質があり、その役割は血中のヘモグロビンを回収することである。
ハプトグロビンには遺伝的に1と2の2種類があるが、研究により、細胞の中で作られたばかりのハプトグロビン2の前駆体にだけ別の機能があることが判明した。
その機能とは、血管や小腸の細胞膜を結合させているタイトジャンクションからZO-1を遊離させ構造を可逆的に破壊し、巨大分子を通過させるというものである。
研究者らは、この前駆体にゾヌリンと名付けた。
ゾヌリンは、コレラ菌が持っている毒素の一つ(Zot)と同じ構造である。
ゾヌリンは、小麦のグリアジンや、細菌による刺激で、腸や血中に放出される。
人種にもよるが、約7割のヒトがゾヌリンを最低1つは持っている。ゾヌリンを2つ持っているヒトも3割は存在する。
※岡山大学病院の旧ホームページによれば、(おそらく日本人の) ハプトグロビンの血清型の頻度は1-1が5.7%、2-1は49.3%、2-2は33.3%、つまり8割以上がゾヌリンを持っていることになります。
ゾヌリンの構造と機能
ハプトグロビンはα鎖とβ鎖から構成されている。
ハプトグロビン前駆体はα鎖とβ鎖がまだ切断されていない1本鎖の状態である(Fig.1参照)。
α鎖には2種類あり、ゾヌリンはα鎖がα2である。
ハプトグロビンは、補体関連タンパク(マンノース結合レクチン関連セリンプロテアーゼ,MASP)から進化した。
他の補体関連タンパク質(MASP)ファミリーには、プラスミノゲン関連成長因子(上皮成長因子EGF、肝細胞成長因子HGF)があり、そのレセプター(EGFRなど)と相互作用する可能性がある。
α鎖は、補体制御タンパク質(CPP)を含む。
β鎖は、表皮成長因子様モチーフを含むキモトリプシン様セリンプロテアーゼ(SPドメイン)に関連する。アミノ酸置換によりセリンプロテアーゼ活性は失っている。
ゾヌリンが作用するメカニズム
(1)ゾヌリンβ鎖がEGFRを直接に活性化
(2a)ゾヌリンα鎖 -> PAR2 -> Src(EGFR)
(2b)ゾヌリンα鎖 -> PAR2 -> MMPs/ADAMS -> Pro-HP-EGF -> EGFR
コレラの毒素(Zot)が作用するメカニズムは(2)と同様である(Fig.6、Fig14参照)
ゾヌリン放出の原因
腸上皮のCXCR3に結合してゾヌリンを放出させるα-グリアジンの配列(Fig.13参照)
QVLQQSTYQLLQELCCQHLW
または
QQQQQQQQQQQQILQQILQQ
※Q(グルタミン)、V(バリン)、L(ロイシン)、S(セリン)、T(トレオニン)、Y(チロシン)、E(グルタミン酸)、C(システイン)、H(ヒスチジン)、W(トリプトファン)、I(イソロイシン)
ゾヌリンの関与する疾患(Fig.11参照)
「アレルギー」
喘息
「自己免疫疾患」
強直性脊椎炎
セリアック病(I)(II)(III)
炎症性腸疾患(クローン氏病)
リウマチ性関節炎
全身性エリテマトーデス
1型糖尿病
「癌」
脳癌(グリオーマ、神経膠腫)
乳癌
肺腺癌
卵巣癌
膵臓癌
「神経系疾患」
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
多発性硬化症
統合失調症
by travelair4000ext | 2012-11-28 10:05 | 翻訳