人気ブログランキング | 話題のタグを見る

社会的孤立と精神病18

Recently, another study utilizing genome-wide methylation profiling of blood samples from monozygotic twins discordant for schizophrenia linked aberrant DNA methylation of PGC-1α gene to schizophrenia (Dempster et al., 2011).
一卵性双生児の片方しか統合失調症を発症していない血液サンプルによる全ゲノムのメチル化プロファイリングを利用した最近の別の研究では、PGC-1α遺伝子 (PPARGC1A) の異常なDNAメチル化を統合失調症と関連づけた (Dempster et al., 2011)。




Indeed, one CRE (CREB binding site) was found in mouse PGC-1α promoter region and it encompassed a CpG site (Figure 2).
実際、マウスのPGC-1αプロモーター領域にはcAMP応答配列 (CRE; CREBが結合する箇所) が見つかっており、CREはCpG (メチル化される箇所) を取り囲んでいた (Figure 2)。

※CREB (CRE-binding protein): CRE (cAMP response element) に結合する (binding) タンパク質。CREBは133番目のセリン残基 (Ser133) がcAMP/PKAにより、またはカルシウム・カルモジュリン依存性キナーゼ IV (CaMKIV) によりリン酸化されて活性型のpCREBになる。pCREBはさらにCBP (CREB-binding protein; CREBに結合するタンパク質) と結合して、標的遺伝子群の転写を活性化する



It has been reported that methylation of CpG in CRE blocked pCREB binding (Iguchi-Ariga and Schaffner, 1989; Sunahori et al., 2009).
CRE内のCpGのメチル化は、活性型pCREBの結合を阻止することが報告されている。

※methylation of CpG in CRE blocked pCREB binding: 参照先 (Sunahori et al., 2009) には、
"CREB could not bind to the CRE motif if the dC (deoxycytosine) was converted to dmC (deoxymethylcytosine) and this led to decreased activity of PP2Acα promoter.
(デオキシシトシンがメチル化されているとCREBはCREモチーフに結合できず、PP2Acαプロモーター活性の減少につながった) "
とある。
さらに、「CREBだけでなく、AP-2、c-Myc/Myn、E2F、NF-κBなどの転写因子はCpGメチル化の影響を受け、Sp1やCAAT-box-binding transcription factor (CTF) はメチル化の影響を受けない。メチル化シトシンに dmC binding protein 1/2 (MeCP-1/2) が結合していると転写因子は間接的に影響を受けるが、CREBが影響を受けるかどうかは (2009年時点では) 不明」としている。
参照先のAbstract、Introduction、Discussionは次のような内容。
「全身性エリテマトーデス (SLE) という自己免疫疾患では、末梢のT細胞にセリン/スレオニンプロテインホスファターゼのProtein phosphatase 2A (PP2A) の触媒 (catalytic) サブユニットであるPP2Acが強く発現し、活性も高い。
リン酸化したCREB (pCREB) はPP2Acの基質の一つだが、pCREBはIL-2の発現を調節する重要な転写因子であり、PP2Acが強く発現するSLEではT細胞によるIL-2の産生が減少している。IL-2の低下はSLEの発症に重要であると考えられている。

 (SLE T) PP2Ac↑→pCREB↓→IL-2↓

SLE患者のT細胞にPP2AcのsiRNAで干渉すると、PP2Acのタンパク質濃度と活性は減少した。干渉によりpCREBの濃度とそのIL-2プロモーターとc-fosプロモーターへの結合は増加し、activator protein 1 (AP-1; TGAGTCAに結合する) 活性が上昇して、IL-2産生を正常化させた。

 PP2Ac-siRNA干渉→PP2Ac↓→pCREB↑→c-fos↑, AP-1↑, IL-2↑

SLEでは、TCR/CD3からhSos、Ras、Raf、MEK1、ERK-1/2を経由するMAPKシグナルに障害がある。ERKシグナル伝達の障害はDNAメチル基転移酵素1 (DNMT1) の発現を低下させ、細胞分裂中に複製された新規の娘DNA鎖のメチル化を低下させる。
調節配列のデオキシシトシン (dC) のメチル化はリン酸化pCREBの結合を制限し、関連遺伝子の転写を抑制する。逆に、プロモーター領域のメチル化の異常な低下は、LFA-1 (T細胞の接着分子) 、CD70 (T細胞の活性化を促進) の過剰発現を引き起こす。

 (SLE T) ERK-1/2↓→DNMT1↓→DNAメチル化↓, pCREB結合↑→PP2Acα↑, IL-2↓, LFA-1↑, CD70↑

PP2Acにはアイソフォームαとβが存在し、βアイソフォーム (PP2Acβ) のプロモーターにはCREモチーフが存在しない。αアイソフォーム (PP2Acα) のプロモーターにはCREモチーフが存在するが、CREモチーフはCpGモチーフに隣接 (flanked) されている。
CpGモチーフのメチル化はpCREBの結合を制限する一方、転写因子SP1 (stable protein 1) の結合はメチル化の影響を受けなかった。
T細胞をDNMT阻害剤の5-アザシトシンで処理すると、PP2AcαのmRNAが増加を示した。

 DNMT阻害剤→DNMT↓→DNAメチル化↓, pCREBのCREモチーフへの結合↑→PP2Acα mRNA↑

いくつかの薬剤 (血管拡張薬のヒドララジンや抗不整脈薬のプロカインアミドはDNAメチル化を抑制する) や抗がん剤、癌、アルツハイマーなど、CpGアイランド低メチル化に関連した状態はPP2Acの発現を増加させる (Sunahori et al., 2009)

※5-azacytosine/5-azacitidine (5-azaC): 5-アザシトシン。シトシンの5位炭素を窒素に置換したもの

※lupus: ループス。狼に噛まれたような皮膚症状から」







CREB is an important regulator for PGC-1α gene transcription (Herzig et al., 2001; St-Pierre et al., 2006).
CREBは、PGC-1α遺伝子の転写にとって重要な調節因子である。

Barrès et al. (2009) provided evidence that PGC-1α hypermethylation is concomitant with reduced mitochondrial content in type 2 diabetic patients, and links DNMT3B to the acute fatty-acid-induced non-CpG methylation of PGC-1α promoter.
Barrèsらが提示したエビデンスによれば、2型糖尿病患者ではPGC-1αの過剰なメチル化とミトコンドリアの量の減少が同時に生じている。
PGC-1αの過剰なメチル化は、DNAメチル基転移酵素3B (DNMT3B) と、遊離脂肪酸によるPGC-1αプロモーターの非CpGシトシンの急激なメチル化とを関連させる。

※non-CpG methylation: 非CpGメチル化。CpG以外の、CpA、CpT、CpC

※acute fatty-acid-induced: ヒトの筋管 (myotube) では、TNF-αまたは遊離脂肪酸 (パルミチン酸/オレイン酸) に48時間だけ曝露することで、非CpGシトシンが急速にメチル化した (インスリン/グルコースではメチル化しなかった)。逆にDNMT3bのサイレンシングはパルミチン酸によるメチル化を阻害した (Barrès et al., 2009)


Although studies by Dempster et al. (2011) and others assessed PGC-1α methylation status in peripheral samples, and the methylation response in peripheral cells may not accurately reflect methylation status in the brain (Provençal et al., 2012), these data suggest that a differential epigenetic response does occur on PGC-1α in schizophrenic individuals compared with normal subjects.
Dempsterらによる研究、そして他の人たちによる末梢サンプルのPGC-1αメチル化状態の分析、ならびに末梢の細胞におけるメチル化の応答は、脳のメチル化状態を正確には反映していないかもしれない。
にもかかわらずこれらのデータは、正常な人たちと比較して統合失調症の患者では、PGC-1αに異なるエピジェネティックな応答が実際に起きることを示唆している。



There is also evidence that PGC-1α gene expression and activity are influenced directly by inhibitors of histone deacetylases (HDACs), enzymes that epigenetically modify histones to block transcription.
PGC-1αの遺伝子の発現と活性は、ヒストン脱アセチル酵素 (HDAC) 阻害剤に直接影響されるというエビデンスも存在する。
HDACはエピジェネティックにヒストンを修飾して転写を阻害する。

Overexpression of HDAC5 reduces PGC-1α in the heart (Czubryt et al., 2003) by blocking the developmental induction of PGC-1α by myocyte enhancing factor 2 (MEF2), and exposure of neuroblastoma cells to the HDAC inhibitors trichostatin A or valproic acid (a mood stabilizer given as adjunct therapy to schizophrenia patients) increases mRNA level of PGC-1α and its target gene glucose transporter four (Cowell et al., 2009).
HDAC5の過剰発現は、筋細胞促進因子2 (MEF2) が心臓の発達時にPGC-1αを誘導するのを阻止することによって心臓のPGC-1αを減少させる。
神経芽細胞腫の細胞を、HDAC1/3/4/6/10阻害剤のトリコスタチンAや、気分安定薬でHDAC1阻害剤のバルプロ酸 (統合失調症患者に補助療法として与えられる) に曝露すると、PGC-1αとその標的遺伝子のグルコース輸送体4 (GLUT4) のmRNA濃度が上昇する (Cowell et al., 2009)。

trichostatin A: トリコスタチンA。亜鉛を含む触媒ドメインに結合することでHDAC阻害剤として働く。HDACのクラスI (1/2/3/8) とクラスII (4/5/6/7/9/10) のうち、TSAは1、3、4、6、10を阻害する

※valproic acid: バルプロ酸。HDAC1を阻害する他、GABAトランスアミナーゼを阻害 (GABAの代謝を低下)、FoxO1を阻害するなどの作用がある

Figure 5.
MEF2/HDAC5とPGC-1αの相互作用モデル。
PGC-1αとPPARαは協力して、心臓の脂肪酸化に関与する酵素の遺伝子を活性化する。
PGC-1αとMEF2Cは、筋肉の主なグルコース取り込みメカニズムであるGLUT4グルコース輸送体の発現を制御することにより、グルコース取り込みを調節することが明らかにされている。
MEF2は胎児の筋肥大の間の遺伝子プログラムの調節もする。
CaMKはHDACのクラスIIをリン酸化するように刺激して、それらを核から排出する。
CaMKまたは関連するキナーゼによるHDACの不活性化はPGC-1αの抑制を解除 (derepress) して、ミトコンドリアの生合成を増加させる結果になる。
CnAはカルシニューリン (カルシウム依存性セリン-スレオニンホスファターゼ)、CaMKはカルシウム・カルモジュリン依存性キナーゼ。




Hypoxia exposure itself can cause an increase in the expression of the DNA methylating enzymes DNMT1 and DNMT3b mRNA that is sustained in adulthood and accompanied by increased methylation of the SOD2 promoter (Nanduri et al., 2012);
低酸素への曝露は、それ自体がDNAメチル化酵素のDNMT1/DNMT3bのmRNA発現上昇を引き起こす。
その発現上昇は成年期に持続し、それと同時にSOD2プロモーターのメチル化の上昇が起きる。

※hypoxia exposure itself: 新生時に断続的な低酸素に暴露したラットは、成体においても頚動脈小体ならびに副腎クロム親和性細胞による低酸素への応答が悪化を示す (頚動脈小体はO2分圧、CO2分圧、pHを感知する)。この低酸素への感受性は、酸化ストレスの上昇/抗酸化ストレス酵素の発現と関連し、SOD2遺伝子の発現低下は転写開始箇所と近いCpGメチル化の過剰と関連した (Nanduri et al., 2012)

SOD2: スーパーオキシドディスムターゼ2。SOD2はミトコンドリアに存在し、スーパーオキシドを分解してH2O2とO2にする

; taking into account the role of PGC-1α in tissue responses to hypoxia (Arany et al., 2008; Zhu et al., 2010; Pino et al., 2012; Zhao et al., 2012), it is attractive to speculate that environmental stimuli can modulate PGC-1α-dependent pathways and PVI antioxidant capacity by epigenetic mechanisms.
低酸素への組織の応答におけるPGC-1αの役割を考慮すると、低酸素のような環境からの刺激がDNMT/HDAC等により仲介されるエピジェネティックな仕組みによってPGC-1αに依存的な経路とPVIの抗酸化能力を調整すると推測することは興味をそそられるのである。

※the role of PGC-1α in tissue responses to hypoxia:
骨格筋では、低酸素によりPGC-1αが補助活性化因子としてERRαと共にVEGFのプロモーターと第1イントロンに結合して、VEGFを誘導する (Arany et al., 2008)。
ファロー四徴症の心筋では、低酸素によりAMPKの調節を介してPGC-1αが発現して、ミトコンドリアの生合成が起きる (Zhu et al., 2010)。
白色脂肪細胞では低酸素に応答してHIF-1αと同時に炎症性遺伝子 (TNF、IL-6、IL-1、Ccl2) も発現し、PPARγリガンドは炎症性遺伝子を抑制してHIF-1αの標的遺伝子 (VEGF等) の発現を促進した。褐色脂肪細胞ではPPARγの補助活性化因子であるPGC-1α/PGC-1βが低酸素に応答する遺伝子の発現を促進した (Pino et al., 2012)
血管上皮細胞と神経細胞をあらかじめ低酸素に調整 (preconditioning) しておくと、PGC-1αとHIF-1α、VEGFの発現が促進されて酸化ストレスから保護される (Zhao et al., 2012)
 
 

by travelair4000ext | 2013-11-20 12:51 | 翻訳  

<< 社会的孤立と精神病19 社会的孤立と精神病17 >>