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社会的孤立と精神病19

Hypothalamic-pituitary-adrenocortical (HPA) hyperactivity by social isolation/stress could involve into PGC-1α regulation through epigenetic mechanisms as well.
社会的孤立/ストレスによる「視床下部-下垂体-副腎皮質 (HPA)」の過剰な活性化は、エピジェネティックな仕組みによってもPGC-1αの調節に関与する可能性がある。




Activation of the HPA axis represents a common reaction to many environmental insults, including infection, malnutrition, hypoxia, and psychosocial stress (Oitzl et al., 2010).
HPA軸の活性化は、環境による多くの傷害に対して起きる共通の反応を表している。
傷害とは例えば感染、栄養不足、低酸素、心理社会的ストレスである。



Most of rodent studies showed that chronic early life social isolation is associated with higher basal levels of glucocorticoids and increased HPA response to acute stressors (Weiss et al., 2004; Chida et al., 2005; Perelló et al., 2006; Ruscio et al., 2007; Williams et al., 2009; Weintraub et al., 2010; Toth et al., 2011).
若い頃の慢性的な社会的孤立ストレスは、糖質コルチコイドの基礎的な濃度の高さならびに急激なストレス要因に対するHPA応答の増大と関連することが、多くのげっ歯類の研究で示された。

※higher basal levels of glucocorticoids: C3(1)/SV40ラージT-抗原トランスジェニックマウスでは、離乳後の社会的孤立は乳腺における重要な代謝経路の酵素の発現を上昇させ、慢性的な社会的孤立は脂質合成と解糖系の発現を促進した (脂質合成・解糖系のどちらも乳癌の成長の促進に寄与することが知られている)。同時に、社会的孤立マウスではコルチコステロンによるストレス応答が増加した (Williams et al., 2009)

※C3: prostate steroid binding protein (PSBP; 前立腺ステロイド結合タンパク質) の構成要素。C1とC3がジスルフィド結合してサブユニットになり、サブユニット二つで四量体のPSBPになる。SV40ラージT抗原を乳腺/前立腺に安定して発現させるために利用される


SV40 (simian virus 40): 猿ウイルス40。ラージT抗原はSV40感染初期に環状2本鎖DNAから転写/翻訳されてSV40のゲノムDNAを複製するが、細胞のp53やpRbとも相互作用して細胞を癌化する。スモールT抗原はPP2Aと相互作用してMycのユビキチン化を阻害して細胞を癌化する






Glucocorticoids have been reported to influence DNA methylation in genes containing glucocorticoid response elements (GREs), such as fkbp5 and tyrosine hydroxylase gene (Lee et al., 2011; Niwa et al., 2013).
糖質コルチコイドは糖質コルチコイド応答配列 (GRE) を含む遺伝子のDNAメチル化に影響することが報告されており、それは例えばfkbp5遺伝子とチロシン水酸化酵素遺伝子である。

fkbp5 (FK506 binding protein 5): FK506結合タンパク質5。FKBP5は、Hsp90、p23、糖質コルチコイド受容体などと共に細胞質でヘテロ複合体を形成する
Leeらによる研究では、水にコルチコステロンを混ぜてマウスに飲ませ、血漿中のFKBP5遺伝子のメチル化の度合いを4週間連続で (serial) 調べた。FKBP5遺伝子のイントロン1領域のメチル化の割合は糖質コルチコイドの平均負荷を反映して低下した (Lee et al., 2011)

※tyrosine hydroxylase: チロシン水酸化酵素。チロシンの3位を水酸化してドパ (DOPA) を生成する。ドーパミン等のカテコールアミンを生合成する律速酵素。
Niwaらは、DISC1遺伝子トランスジェニックマウス (G) を5週齢から8週齢までの3週間だけ社会的孤立 (E) の状態にして (GxE)、プレパルスインヒビション、強制水泳、メタンフェタミン負荷などのテストを実施した。その後、前頭皮質 (frontal cortex; Fc)、側坐核 (nucleus accumbens; NAc)、腹側被蓋野 (ventral tegmental area; VTA) のドーパミン濃度と、チロシン水酸化酵素 (TH) プロモーターのCpGメチル化の度合い、血漿中のコルチコステロン濃度を調べた。
GxEマウスではVTAドーパミン作動性ニューロンからFcへの投射が低下し (dopaminergic change may be more specific to the projections originating from VTA)、THプロモーター領域にあるCpGの多くがメチル化していたが、糖質コルチコイド受容体 (GR) のアンタゴニスト (RU38486) を与えたマウスではメチル化が減少した。8週齢のGxEマウスでのメチル化は、グループに戻されて20週齢になったマウス (GxE-Group) でも維持されていた (Niwa et al., 2013)

※genes containing glucocorticoid response elements (GREs): マウスのチロシン水酸化酵素は、転写開始箇所 (+1) から5'方向の-2435から-2421bpの位置に糖質コルチコイド応答配列 (GRE) 様の配列 (GGCACAGTGTGGTCT) を持つ






Studies in early postnatal maternal care/separation have linked epigenetic mechanisms with alteration of genes involved in the regulation of the HPA axis.
生後早期の母親の世話/分離における研究は、エピジェネティックな仕組みと、HPA軸の調節に関与する遺伝子の変化とを関連付けている。

Early life experience influences DNA methylation state of glucocorticoid receptor (GR) gene in human studies (Oberlander et al., 2008; McGowan et al., 2009; Labonte et al., 2012) and animal models (see review by, Weaver, 2009).
ヒトの研究と動物モデルでは、幼い頃の経験が糖質コルチコイド受容体 (GR) 遺伝子のDNAメチル化の状態に影響する (Weaver氏2009年のレビュー参照)。

※early life experience: Oberlanderらによれば、生まれる前の3ヶ月間に母親がうつ病または不安な気分 (anxious mood) だと、新生児の時点での臍帯血単球の糖質コルチコイド受容体 (GR) の遺伝子NR3C1エキソン1FのCpGアイランドで、NGFI-Aが結合する箇所のメチル化が増加した。このメチル化の増加は、生後3ヶ月の新生児の唾液コルチゾールによるストレス応答の増加と関連した (Oberlander et al., 2008)。
McGowanらは児童虐待を受けたことのある自殺者の死後の海馬とそうでない自殺者の海馬とを比較して、ニューロン特異的なGRのNR3C1プロモーターでシトシンのメチル化が増加し、GRのmRNAが減少していたが、特にスプライシングバリアント1Fを持つGRのmRNAが減少したことを発見した。同じメチル化の状態を模した状態では、転写因子NGFI-Aの結合とNGFI-A標的遺伝子の転写が減少していた (McGowan et al., 2009)。
さらにLabonteらは、児童虐待後の自殺者の海馬ではGRのスプライシングバリアント1Fだけでなく、1Bと1Cを持つGRのmRNAが減少したことを発見した。前帯状回では変化が見られなかった (Labonte et al., 2012)

※NR3C1 exon 1F: ヒトNR3C1遺伝子5'側の第1エキソンは、1A、1D、1E、1B、1F、1G、1C、1Hなど複数が存在してそれぞれが転写開始点を持つが、翻訳はされない。以下はエキソン1Fの前後の配列。大文字がエキソン1F、太字がCpG。斜体の部分にNGFI-Aが結合する。エキソン1FはCpGに囲まれている (Oberlander et al., 2008; McGowan et al., 2009)
agag cg agtgggtctggagc cgcg gagctggg cg gggg cg ggaagg
AGGTAG CG AGAAAAGAAACTGGAGAAACT CG GTGGCCCTCTTAA CG C CG CCCCAGAGAGACCAG
gt cg gcccc cg c cg ctgc cg c cg ccaccctttttcctggggagttggggg



※epigenetic mechanisms / alteration of genes involved in the regulation of the HPA axis: 副腎による糖質コルチコイドの分泌は、海馬、視床下部、下垂体によりネガティブフィードバックを受け、糖質コルチコイドの受容体はHPA軸の調節を左右する







Epigenetic-mediated changes in GR could contribute to PGC-1α alteration.
エピジェネティックを介したGRの変化は、PGC-1αの変化の原因になり得る。

Further studies need to be done to clarify how GxE influence the transcription of PGC-1α and PV and antioxidant capacity in cortical PVIs.
遺伝と環境の相互作用は、皮質PVIのPGC-1αとPVの転写、そして抗酸化能力に対してどのように影響するのか。
それを明らかにするため、さらなる研究が必要である。

by travelair4000ext | 2013-11-22 23:50 | 翻訳  

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